コラム COLUMN
膝 高齢だからと諦めないで!膝の痛みを克服して旅行に行く方法

この記事の内容
膝の痛みで旅行を諦めていませんか?
「歩けるか不安」で旅行を控える方は少なくありません
「旅行に行きたいけれど、膝が痛くて歩けるか不安です」
診察室では、このようなお話をよく伺います。
特に50代以降になると、階段の上り下り、長い距離の歩行、観光地での坂道、駅の乗り換えなどが不安になり、「家族に迷惑をかけるくらいなら旅行はやめておこう」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、膝の痛みがあるからといって、すぐに旅行を諦める必要はありません。
もちろん、強い腫れや激しい痛みがある場合は無理をしてはいけません。しかし、多くの場合は、原因を知り、歩き方や準備を工夫し、膝に合った対策を行うことで、旅行を楽しめる可能性があります。
大切なのは、「年齢のせいだから仕方ない」と放置しないことです。
旅行中に膝が痛くなりやすい場面
旅行では、普段の生活よりも膝に負担がかかりやすくなります。
たとえば、長時間歩く観光地めぐり、駅や空港での移動、階段や坂道、砂利道や石畳、バスや電車の乗り降り、旅館での布団からの立ち上がりなどです。
普段は車移動が多い方でも、旅行先では思った以上に歩くことがあります。スマートフォンの歩数計を見て、「こんなに歩いていたの?」と驚く方も多いですね。
膝の痛みは、歩き始めに痛い方、歩いているうちに痛くなる方、階段の下りで特に痛い方、旅行の翌日に腫れてくる方など、人によって出方が違います。
この違いを知ることが、膝の痛みを克服して旅行に行くための第一歩です。
膝の痛みの原因と旅行前に確認したいこと
膝の痛みの原因は「軟骨のすり減り」だけではありません
高齢の方の膝の痛みというと、「軟骨がすり減っているから」と言われることが多いと思います。
たしかに、変形性膝関節症では、関節の表面を覆っている軟骨が傷み、関節に負担がかかりやすくなります。これにより、痛み、腫れ、こわばり、曲げ伸ばしのしにくさが出ることがあります。
ただし、膝の痛みの原因は軟骨だけではありません。
太ももの筋力低下、膝まわりの炎症、半月板の傷み、O脚による内側への負担、股関節や足首の硬さ、体重増加、歩き方の癖なども関係します。
膝は、家で例えると「柱」と「クッション」と「床」のバランスで支えられています。軟骨だけを見ても、柱である筋肉や、土台である足元のバランスが崩れていれば、痛みはなかなか改善しません。
つまり、旅行に行ける膝を目指すには、痛い場所だけでなく、膝を支える全体の状態を見ることが大切です。
旅行前に確認したい膝の状態
旅行を予定している方は、出発前に今の膝の状態を確認してみましょう。
まず、平地を10〜15分歩いたときに痛みが強くなるかどうかです。短い距離でも痛みが増える場合は、旅行中の歩行量をかなり調整する必要があります。
次に、階段の上り下りです。特に下りで痛みが強い方は、観光地の階段や坂道で負担が増えやすい傾向があります。
また、膝に腫れや熱感がある場合は注意が必要です。腫れている膝は、すでに関節の中で炎症が起きている状態かもしれません。そのまま旅行で歩きすぎると、痛みが長引くことがあります。
「旅行までに何とかしたい」という方は、早めに整形外科で状態を確認しておくと安心です。

膝の痛みを克服して旅行に行くための対策
保存療法で歩ける膝を目指す
膝の痛みがある場合でも、すぐに手術が必要とは限りません。
まず基本となるのは保存療法です。保存療法とは、手術以外の治療や対策のことです。運動療法、ストレッチ、体重管理、装具、足底板、痛み止め、関節注射、生活指導などが含まれます。
特に大切なのは、太ももの筋肉を落とさないことです。
膝が痛いと動くのが怖くなります。しかし、動かない期間が長くなると筋力が落ち、膝を支える力が弱くなります。その結果、さらに痛みが出やすくなるという悪循環に入ってしまいます。
旅行を目標にするなら、「痛みをゼロにする」ことだけを目指すのではなく、「安全に歩ける距離を少しずつ伸ばす」ことが大切です。
自宅でできるストレッチと筋力トレーニング
旅行前の準備としておすすめなのは、無理のない範囲でのストレッチと筋力トレーニングです。
まずは、太ももの前側を鍛える運動です。椅子に座り、片方の膝をゆっくり伸ばして5秒止め、ゆっくり下ろします。これを左右10回ずつ行います。痛みが強く出ない範囲で続けましょう。
次に、ふくらはぎや太ももの裏のストレッチです。膝の動きは、太ももやふくらはぎの硬さにも影響されます。筋肉が硬いと、歩くときに膝へ余計な負担がかかります。
また、いきなり長距離を歩くのではなく、1日5分からでもよいので歩く習慣を作ることが大切です。慣れてきたら10分、15分と少しずつ増やします。
旅行の直前だけ頑張るより、数週間前から少しずつ準備する方が膝には優しいです。
旅行中に膝を守る歩き方と工夫
旅行中は、「たくさん歩く」よりも「休みながら歩く」ことを意識しましょう。
観光の予定を詰め込みすぎず、午前と午後に休憩時間を入れることが大切です。階段が多い場所では、エレベーターやタクシーを使うことも悪いことではありません。
靴はとても重要です。底が薄い靴や、かかとが不安定な靴は避けましょう。クッション性があり、足に合った歩きやすい靴を選んでください。新品の靴を旅行で初めて履くのはおすすめしません。必ず事前に履き慣らしておきましょう。
杖やサポーターも、必要に応じて役立ちます。杖は「年寄りっぽい」と抵抗を感じる方もいますが、膝への負担を減らし、転倒予防にもつながります。痛い膝と反対側の手で持つのが基本です。
ヒアルロン酸注射だけに頼りすぎないことも大切
膝の痛みで整形外科を受診すると、ヒアルロン酸注射を受けたことがある方も多いと思います。
ヒアルロン酸注射で一時的に痛みが軽くなる方もいますが、すべての方に十分な効果が出るわけではありません。また、注射を続けているだけで筋力や歩き方が改善するわけではないため、「打っているのに良くならない」という方も少なくありません。
膝の痛みを克服して旅行に行くには、注射だけに頼るのではなく、運動、体重管理、装具、歩き方の見直しを組み合わせることが大切です。
「注射をしているから大丈夫」ではなく、「旅行で歩ける膝を作る」という視点を持ちましょう。
体重管理は膝への負担を減らす大切な対策
体重が増えると、歩くたびに膝へかかる負担も増えます。
特に階段の下りや坂道では、膝には体重以上の力がかかります。そのため、少しの体重変化でも膝の痛みに影響することがあります。
ただし、高齢の方が急に食事を減らしすぎるのはおすすめできません。筋肉まで落ちてしまうと、かえって歩く力が弱くなることがあります。
大切なのは、たんぱく質をしっかりとりながら、間食や甘い飲み物を見直し、無理のない範囲で体重を整えることです。
旅行を楽しむための体づくりと考えると、前向きに取り組みやすくなります。

よくある質問とまとめ
Q. 膝が痛いときは旅行をやめた方がいいですか?
A. 必ずしも旅行をやめる必要はありません。
ただし、膝の腫れが強い、歩くたびに痛みが増える、膝が不安定で転びそうになる場合は注意が必要です。旅行先で無理をすると、痛みが悪化して帰宅後も長引くことがあります。
まずは、今の膝でどのくらい歩けるのかを確認しましょう。必要であれば、観光地を減らす、休憩を多めに入れる、タクシーを使う、杖やサポーターを準備するなどの工夫で対応できます。
Q. 痛みがあるときは動かさない方がいいですか?
A. 強い痛みや腫れがある急性期は、無理に動かす必要はありません。
しかし、長期間まったく動かさないと筋力が落ち、膝がさらに不安定になることがあります。痛みが落ち着いている範囲で、軽いストレッチや椅子に座って行う運動から始めることが大切です。
「動くと悪くなりそうで怖い」という方は、自己流で無理をせず、整形外科で運動内容を相談すると安心です。
Q. 手術しないと旅行には行けませんか?
A. 膝の状態によりますが、手術をしなくても旅行を楽しめる方は多くいらっしゃいます。
保存療法、運動療法、装具、体重管理、生活動作の工夫によって、歩行能力が改善することがあります。もちろん、変形が強く日常生活にも大きな支障がある場合は、手術が選択肢になることもあります。
大切なのは、「手術か我慢か」の二択で考えないことです。今の膝の状態に合わせて、できる対策を一つずつ積み重ねていきましょう。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

年齢のせいと諦めず、旅行に行ける膝を目指しましょう
膝の痛みがあると、旅行に行くことが不安になります。
「途中で歩けなくなったらどうしよう」
「家族に迷惑をかけたくない」
「もう年だから仕方ない」
そのように感じるのは自然なことです。
しかし、膝の痛みは年齢だけで決まるものではありません。筋力、歩き方、体重、靴、装具、生活習慣、治療の組み合わせによって、改善を目指せることがあります。
旅行は、人生の楽しみの一つです。行きたい場所がある、会いたい人がいる、家族との思い出を作りたい。その気持ちは、とても大切にしてよいものです。
膝の痛みを理由にすぐ諦めるのではなく、まずは今の状態を知り、できる対策から始めてみましょう。
「高齢だから無理」と決めつける必要はありません。
膝の痛みを克服して旅行に行く方法は、きっとあります。痛みとうまく付き合いながら、もう一度、行きたい場所へ歩いていける体を目指していきましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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