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高齢者の膝の痛む部位の違いで疑うべき疾患とは?原因と受診の目安を整形外科専門医が解説

高齢者の膝の痛む部位の違いで疑うべき疾患とは?原因と受診の目安を整形外科専門医が解説

「膝の内側が歩くとズキッとする」「階段を下りると膝のお皿の周りが痛い」「膝の裏が張って正座できない」

診療の場では、高齢者の方からこのようなご相談をよく受けます。ひとことで膝の痛みと言っても、痛む場所は人によって違います。膝の内側が痛い方もいれば、外側、前側、裏側に痛みを感じる方もいます。

実は、高齢者の膝の痛む部位の違いは、疑うべき疾患を考えるうえで大切な手がかりになります。もちろん、痛む場所だけで病名が決まるわけではありません。しかし、「どこが痛いか」「どんな動作で痛いか」を整理することで、変形性関節症、半月板の傷み、靭帯や腱の炎症、膝の裏の腫れなど、原因をある程度考えやすくなります。

この記事では、高齢者の膝の痛む部位の違いによって疑われる疾患、整形外科を受診すべき目安、自宅でできる対策、保存療法についてわかりやすく解説します。

症状の特徴とよくある困りごと

どんな場面で痛みや違和感が出やすいか

高齢者の膝の痛みは、安静にしているときよりも、動き始めや体重をかけたときに出やすい傾向があります。たとえば、朝起きて最初の一歩、椅子から立ち上がる瞬間、買い物で長く歩いたあと、階段を下りるときなどです。

膝の内側が痛む場合は、歩行時や階段、立ち上がりで痛みが出ることが多く、変形性膝関節症でよく見られます。膝の前側、特にお皿の周りが痛む場合は、階段の上り下りやしゃがむ動作で痛みが出やすくなります。膝の裏側が張る、曲げにくい、正座できないという場合は、関節内に水がたまっていたり、膝の裏にふくらみができていたりすることがあります。

「年のせいだと思っていたけれど、最近は外出が面倒になった」「階段を避けるようになった」という方は少なくありません。痛みの部位と生活上の困りごとを一緒に考えることが大切です。

放置すると生活にどんな影響が出るか

膝の痛みを我慢していると、自然に歩く量が減っていきます。すると太ももやお尻の筋力が落ち、膝にかかる負担がさらに増えやすくなります。痛いから動かない、動かないから筋力が落ちる、筋力が落ちるからさらに痛くなる、という悪循環に入ることがあります。

また、痛い側の足をかばうことで、反対側の膝、股関節、腰に負担がかかることもあります。膝だけの問題と思っていたら、腰痛や足首の痛みまで出てきたという方もいます。

ただし、痛みがあるからといって、すぐに手術が必要という意味ではありません。早い段階で原因を確認し、生活習慣、ストレッチ、筋トレ、リハビリなどの保存療法を組み合わせることで、痛みの軽減や歩きやすさの改善を目指せる場合があります。

高齢者の膝の痛む部位の違いで考えられる原因

膝の内側が痛い場合に疑う疾患

高齢者の膝の痛みで最も多いのが、膝の内側の痛みです。特に、歩くと痛い、立ち上がると痛い、階段で痛い、O脚が強くなってきたという場合は、変形性膝関節症が疑われます。

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ったり、関節に炎症が起きたりして痛みが出る状態です。日本人では膝の内側に負担がかかりやすく、内側の関節が狭くなる方が多く見られます。

また、膝の内側の少し下がピンポイントで痛い場合は、鵞足炎という腱の炎症が関係していることもあります。歩きすぎ、階段、急な運動、合わない靴などがきっかけになることがあります。内側の痛みでも、関節そのものが原因なのか、腱や筋肉が原因なのかで対策が変わります。

膝の前側やお皿の周りが痛い場合に疑う疾患

膝の前側、特に膝のお皿の周囲が痛む場合は、膝蓋大腿関節と呼ばれる、お皿と太ももの骨の間に負担がかかっている可能性があります。階段を下りると痛い、しゃがむと痛い、正座がつらい、長く座ったあとに立つと痛いという方に多い症状です。

高齢者では、膝の軟骨のすり減りだけでなく、太ももの前の筋力低下や、膝のお皿の動きの悪さが関係することがあります。膝の前側が痛い方は、急にスクワットを増やしたり、深くしゃがみ込む運動を無理に行ったりすると、かえって痛みが強くなることがあります。

一方で、適切な範囲で太ももの筋肉を鍛えることは大切です。痛みが出ない角度での筋トレや、椅子に座って行う運動から始めると取り組みやすくなります。

膝の外側や裏側が痛い場合に疑う疾患

膝の外側が痛い場合は、膝の外側の靭帯や腱、半月板、関節の変形などが関係していることがあります。長く歩くと外側が痛む、膝が外に引っ張られる感じがする、坂道や階段で痛むという場合は注意が必要です。

膝の裏側の痛みや張りでは、関節に水がたまっている、膝の曲げ伸ばしが悪くなっている、膝の裏にベーカー嚢腫と呼ばれる袋状のふくらみができている、などが考えられます。膝の裏が突っ張って正座できない、深く曲げると苦しい、腫れている感じがするという方は、整形外科で確認した方が安心です。

また、急にふくらはぎまで腫れる、強い痛みがある、熱感がある場合は、膝以外の病気が関係することもあります。そのような場合は早めの受診が必要です。

自宅でできる対策と予防法

痛みがあるときの動き方

膝が痛いときは、無理に歩き続ける必要はありません。特に、痛みが強い日や腫れている日は、長距離の散歩、階段の反復、深いしゃがみ込みは控えた方がよいでしょう。

ただし、完全に動かさない状態が続くと、筋力や柔軟性が落ちてしまいます。痛みが落ち着いている範囲で、短い距離を歩く、椅子からゆっくり立ち上がる、膝を軽く曲げ伸ばしするなど、無理のない動きを続けることが大切です。

「痛みをゼロにしてから動く」のではなく、「痛みを悪化させない範囲で動く」と考えると、日常生活に取り入れやすくなります。

無理なくできるストレッチ・筋トレ

高齢者の膝の痛みでは、太ももの前側、お尻、股関節まわりの筋力が重要です。膝だけを見ていると原因が見えにくいこともあります。

自宅で行いやすい運動としては、椅子に座って片膝をゆっくり伸ばす運動、立った状態で軽くかかとを上げる運動、仰向けで膝を伸ばしたまま足を少し上げる運動などがあります。いずれも痛みが強く出ない範囲で行いましょう。

ストレッチでは、太ももの裏、ふくらはぎ、股関節まわりをゆっくり伸ばすことが役立ちます。反動をつけず、呼吸を止めずに行うのがポイントです。痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。

体重、靴、歩き方など生活習慣の見直し

膝には体重の何倍もの負担がかかることがあります。そのため、体重が増えると膝の内側や前側に痛みが出やすくなります。急激な減量を目指す必要はありませんが、間食や夜食を見直すだけでも膝の負担軽減につながります。

靴も大切です。底がすり減った靴、かかとが不安定な靴、硬すぎる靴は、膝への負担を増やすことがあります。歩くと痛い方は、クッション性があり、かかとが安定する靴を選びましょう。

また、痛い側をかばって極端にびっこを引く歩き方になると、腰や反対側の膝にも負担がかかります。必要に応じて杖を使うことも、手術回避や生活の質を保つための大切な工夫です。

整形外科で行われる治療法

保存療法とは何か

膝の痛みに対する保存療法とは、手術以外の方法で痛みを和らげ、動きやすさを改善する治療のことです。薬、湿布、装具、リハビリ、生活指導、体重管理、運動療法などを組み合わせて行います。

変形性関節症と診断された場合でも、すぐに手術になるわけではありません。痛みの程度、レントゲンやMRIの状態、歩行能力、生活で困っている内容を総合的に見て、治療方針を考えます。

「手術はできれば避けたい」と考える方は多いですが、そのためにも早めに状態を確認し、膝への負担を減らす対策を始めることが大切です。

薬、湿布、装具、リハビリの役割

痛みが強い時期には、痛み止めや湿布を使って炎症を抑えることがあります。痛みを我慢しすぎると歩き方が崩れ、かえって回復しにくくなることがあるため、必要な時期に適切に使うことは意味があります。

膝の内側に負担がかかっている方では、足底板やサポーターなどの装具が役立つ場合があります。ただし、合わない装具を長く使うと違和感や別の痛みにつながることもあるため、医師や専門職に相談しながら使うと安心です。

リハビリでは、膝だけでなく、股関節、足首、体幹の動きも確認します。膝の痛みは関節だけの問題ではなく、筋力、柔軟性、歩き方が関係していることが多いためです。

ヒアルロン酸注射の限界と注意点

整形外科では、関節注射としてヒアルロン酸注射が行われることがあります。ヒアルロン酸注射は、一時的に膝の痛みが楽になることはあります。特に、軽度から中等度の変形性膝関節症で、炎症やこわばりがある場合に使われることがあります。

一方で、ヒアルロン酸注射を何度も続ければ、すり減った軟骨や関節そのものが元通りになるわけではありません。痛みを一時的に軽くする助けにはなっても、根本的な改善には限界があります。

そのため、注射だけに頼るのではなく、体重管理、筋トレ、ストレッチ、歩き方の見直し、リハビリなどを組み合わせて考えることが大切です。注射を続けているのに歩きにくさが悪化している場合は、治療方針を見直すタイミングかもしれません。

よくある質問

Q1. 痛みがあるときは動かさない方がいいですか?

A. 痛みが強い時期は無理を避ける必要がありますが、まったく動かさない状態が続くと筋力が落ち、かえって痛みが長引くことがあります。状態に合わせた軽い運動やストレッチが大切です。

Q2. 年齢のせいなら治療しても意味がありませんか?

A. 年齢による変化はありますが、痛みの原因は筋力低下、体重、歩き方、炎症、関節への負担などさまざまです。原因に合わせて対策すれば、痛みの軽減や歩きやすさの改善を目指せる場合があります。

Q3. どのタイミングで整形外科を受診すればよいですか?

A. 痛みが2週間以上続く、階段や歩行に支障がある、腫れや熱感がある、急に強い痛みが出た、夜間も痛む場合は、早めに整形外科で相談しましょう。

再生医療という新しい選択肢

近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療PRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。

例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。

ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ

高齢者の膝の痛む部位の違いは、疑うべき疾患を考える大切な手がかりになります。膝の内側が痛い場合は変形性膝関節症、膝の前側が痛い場合はお皿まわりの負担、膝の裏側が張る場合は関節の腫れや水が関係していることがあります。

もちろん、痛む場所だけで正確な診断はできません。大切なのは、どこが痛いのか、どんな動作で痛いのか、腫れや熱感があるのか、歩行や階段にどれくらい支障があるのかを整理することです。

自宅では、痛みを悪化させる動作を避けながら、無理のないストレッチや筋トレ、靴や歩き方の見直しを行いましょう。痛みが長引く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、早めに整形外科で相談することをおすすめします。

膝の痛みを「年齢のせいだから仕方ない」と決めつける必要はありません。原因を知り、今の状態に合った対策を始めることで、歩きやすさや生活の安心感につながる可能性があります。

札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。

院長 川上公誠

プロフィール


監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長

岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。

この記事を書いたのは

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