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膝 変形性膝関節症の痛みを抑える|自宅でできる工夫と受診の目安を整形外科専門医が解説

「朝、立ち上がるときだけ膝が痛い」「買い物の帰り道は大丈夫なのに、階段を下りるときにズキッとする」「以前より正座がつらくなった」。診察室では、このようなご相談をよく受けます。
変形性膝関節症は、年齢とともに増える膝の病気の一つです。しかし、「年齢のせいだから仕方ない」と我慢を続ける必要はありません。膝の状態に合った生活の工夫、無理のないストレッチや筋トレ、必要に応じた整形外科での治療によって、痛みを抑えながら日常生活を送りやすくできる場合があります。
この記事では、変形性膝関節症の痛みを抑えるために自宅でできる工夫、避けたい動作、受診の目安について解説します。手術はできれば避けたいと考えている方にも、まず知っておいていただきたい内容です。
この記事の内容
変形性膝関節症で膝が痛くなるのはなぜでしょうか
軟骨だけが原因とは限りません
変形性膝関節症では、関節の表面を覆う軟骨がすり減ったり、関節の形が少しずつ変化したりします。ただし、痛みの原因は軟骨だけではありません。関節を包む膜の炎症、膝周囲の筋肉のこわばり、半月板への負担、歩き方のくせなども、関節の痛みに関係します。
そのため、レントゲンで変形があるからといって必ず強い痛みが出るわけではなく、逆に変形が軽くても痛みが強いことがあります。痛みの程度と画像所見が必ずしも一致しないことは、診療でも珍しくありません。
歩くと痛い、階段で痛いのには理由があります
歩き始めや立ち上がりで痛い場合は、長く動かさなかった関節や筋肉がこわばっていることがあります。階段、特に下りで痛い場合は、体重を支えながら膝を曲げるため、関節に大きな負担がかかります。
また、膝の内側だけが痛い、膝がまっすぐ伸びにくい、歩くと膝が外側へぶれるように感じるといった症状も、変形性関節症でよくみられます。痛みを避けようとして動かなくなると、筋力や柔軟性が低下し、さらに歩きにくくなることがあります。
膝の状態を知ることが手術回避の第一歩です
痛みが続く場合は、自己判断だけで対処を続けず、整形外科で原因を確認することが大切です。変形性膝関節症のほかに、半月板の傷み、骨の小さな骨折、関節の炎症などが隠れていることもあります。
変形性膝関節症では、運動療法や日常生活の調整、装具、薬物療法などを組み合わせる保存療法が基本になります。日本整形外科学会でも、太ももの筋力を保つ運動や関節の動きを保つ訓練、体重管理、正座を避ける工夫などが紹介されています。
変形性膝関節症の痛みを抑えるために自宅でできる工夫
痛みが強くない日は、少しずつ膝を動かしましょう
膝が痛いと「なるべく動かさない方がよいのでは」と思う方も多いでしょう。しかし、強い腫れや熱感がない時期に全く動かなくなると、太ももの筋肉が衰え、関節がこわばりやすくなります。
おすすめなのは、痛みが強くならない範囲で続けられる運動です。椅子に座って膝をゆっくり伸ばす運動、仰向けで膝を伸ばしたまま脚を少し持ち上げる運動、室内で短時間歩くことなどから始めるとよいでしょう。
筋トレは回数を競うものではありません。「翌日まで痛みが増えない量」を目安にしてください。始めは1日5回から10回程度でも構いません。膝に痛みが出る角度まで無理に曲げたり、反動をつけたりする必要はありません。
ストレッチで太ももとふくらはぎのこわばりを和らげる
変形性膝関節症では、膝だけでなく、太ももの前後やふくらはぎが硬くなっていることがよくあります。筋肉がこわばると、歩くたびに膝へ余計な力がかかりやすくなります。
入浴後など体が温まっているときに、太ももの前、太ももの裏、ふくらはぎを軽く伸ばしてみましょう。痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。「少し気持ちよく伸びる」と感じる程度で20秒ほど保ち、呼吸を止めずに行います。
ストレッチ中に膝の奥が鋭く痛む、腫れが増える、翌日まで痛みが強く残る場合は中止してください。自分に合ったリハビリを知りたい場合は、整形外科で理学療法士に相談する方法もあります。
温める・冷やすを症状に合わせて使い分ける
朝のこわばりや、冷えると痛みが増す場合は、膝を温めると楽になることがあります。入浴、蒸しタオル、サポーターなどを利用し、血流を促すイメージで行いましょう。
一方で、歩き過ぎた後に膝が腫れた、熱っぽい、ズキズキするという場合は、保冷剤をタオルで包み、10分から15分ほど軽く冷やす方がよいことがあります。冷やし過ぎは皮膚を傷めるため避けてください。

膝への負担を減らす生活習慣と歩き方のポイント
正座・深くしゃがむ動作はできるだけ減らしましょう
正座、床からの立ち座り、深くしゃがむ動作は、膝を強く曲げるため関節への負担が大きくなります。正座できないことを無理に改善しようとするより、椅子や洋式トイレを使い、膝を深く曲げる場面を減らす方が安心です。
床で過ごす習慣がある方は、座椅子や高さのあるクッションを使うだけでも立ち上がりが楽になることがあります。洗濯物をたたむ、仏壇の前に座る、庭仕事をするといった場面でも、低い椅子を活用してみてください。
体重を少し見直すことも膝の予防につながります
体重が増えると、歩行や階段で膝にかかる負担も増えます。急な運動や極端な食事制限は続きませんが、間食を少し減らす、夕食後の食べ過ぎを控える、毎日10分多く歩くなど、小さな変更でも積み重ねになります。
ただし、膝が痛いのに長距離を歩いて体重を落とそうとするのは逆効果になることがあります。水中歩行、自転車こぎ、椅子での筋トレなど、膝への衝撃が比較的少ない運動を選ぶことも一つの方法です。
靴と杖、サポーターを上手に使う
底がすり減った靴や、かかとが不安定な靴は歩き方を崩し、膝の痛みにつながることがあります。足に合った、滑りにくく安定した靴を選びましょう。
痛みが強い日は、杖を使うことで膝への負担を減らせることがあります。痛む膝と反対側の手で持つのが基本です。膝サポーターも、ぐらつき感や冷えを和らげる目的で役立つ場合がありますが、締め付けが強過ぎるものは避けてください。

整形外科で行う保存療法とヒアルロン酸注射の考え方
痛み止めだけに頼らず、原因に合わせて治療を考えます
整形外科では、レントゲンなどで膝の状態を確認し、痛みの出方や生活への影響に合わせて治療を考えます。外用薬や内服薬で痛みを和らげることもありますが、胃腸、腎臓、血圧などの状態によって使い方には注意が必要です。
また、リハビリでは、膝を支える太ももの筋肉を鍛えたり、関節が動く範囲を保ったりします。自宅でできる運動でも、痛みの原因に合っていないと続けにくいため、一度フォームや負荷を確認してもらうと安心です。
ヒアルロン酸注射は痛みを和らげる選択肢の一つです
ヒアルロン酸注射は、膝の痛みが一時的に楽になることがあります。ただし、軟骨や関節そのものを元通りにする治療ではありません。注射を続けていても痛みが変わらない、効果がすぐ切れる、生活に支障が出ている場合は、同じ治療を繰り返すだけでなく、膝の状態や生活動作を見直すことが大切です。
治療の目的は、注射を続けることではなく、歩く、買い物に行く、旅行を楽しむなど、ご本人が大切にしたい生活を保つことです。保存療法を十分に行っても痛みが強く、生活の質が大きく下がる場合には、手術を含めた選択肢を相談することもあります。
早めに整形外科を受診したい症状
次のような場合は、自宅で様子を見るだけでなく、早めに整形外科を受診してください。
急に膝が大きく腫れた、赤く熱をもっている、体重をかけられないほど痛い、膝が伸びない・曲がらない、転倒後から痛みが続く、夜も眠れないほど痛む場合です。変形性膝関節症以外の病気や、急な炎症、骨折などを確認する必要があります。
よくある質問
Q1. 痛みがあるときは動かさない方がいいですか?
A. 腫れや熱感が強いときは無理をせず休むことが大切です。ただし、痛みが落ち着いている時期まで全く動かないと、筋力や柔軟性が低下しやすくなります。痛みが増えない範囲で、膝を伸ばす運動や短時間の歩行から始めましょう。
Q2. 階段で痛いときは、上りと下りのどちらを注意すべきですか?
A. 特に下りは、膝で体重を支えながら曲げるため負担が大きくなります。手すりを使い、一段ずつゆっくり下りましょう。痛む足を先に下ろし、次に反対の足をそろえる方法も負担を減らす工夫になります。
Q3. 正座できないのは悪化した証拠ですか?
A. 正座しにくさだけで病気の進行を判断することはできません。ただし、以前より急に曲がらない、痛みが増えた、腫れが続く場合は確認が必要です。無理に正座の練習をするより、膝に負担の少ない生活環境を整えることを優先しましょう。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ
変形性膝関節症の痛みを抑えるためには、膝を深く曲げる動作を減らし、太もも周りの筋肉を無理なく保ち、体重や靴などの生活習慣を見直すことが大切です。痛いからと完全に動かなくなるのではなく、痛みが増えない範囲で少しずつ動かすことが、膝の機能を保つ助けになります。
一方で、急な腫れ、強い痛み、歩けないほどの症状がある場合は、早めに整形外科へ相談してください。「年齢のせい」とあきらめず、痛みの原因を知り、自分の膝に合った対策を続けることが、これからの生活を守る第一歩になります。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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