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膝 膝の痛みが急に強くなった|受診を急ぐべき症状と原因を整形外科医が解説

膝の痛みが急に強くなったときは、痛みの強さだけでなく、腫れ方、熱や赤み、歩けるか、ふくらはぎや足先の状態を確認してください。発熱を伴う赤く熱い膝、外傷後の変形や荷重不能、片脚の急な腫れ、足先の冷感・蒼白・しびれ、胸痛や息苦しさは受診を急ぐ症状です。一方、軽い痛みで歩くことができ、腫れが少なく改善傾向なら、短期間は負荷を減らして経過をみられる場合があります。迷うときは自己判断を続けず、整形外科や救急医療機関へ相談しましょう。
この記事の内容
膝の痛みが急に強くなったときの受診目安
命や脚の機能に関わる症状は119番、感染・血栓・大きな外傷が疑われる症状は当日中、それ以外でも歩行や曲げ伸ばしに支障がある場合は早めの受診が目安です。次の表は判断の目安であり、診断を確定するものではありません。
| 緊急度 | 主な症状 | 行動の目安 |
|---|---|---|
| 今すぐ | 片脚の腫れや痛みに加えて、突然の息苦しさ、胸痛、失神、血の混じるせきがある/足先が急に冷たい、白い・紫色、しびれる、動かしにくい/大きなけがで明らかな変形、骨が見える傷、止まりにくい出血がある | 119番を検討。自分で運転しない |
| 当日中 | 膝が赤く熱を持って大きく腫れ、強く痛む/発熱、悪寒、強いだるさがある/片側のふくらはぎが急に腫れ、痛みや熱感がある/外傷後に体重をかけられない、急速に腫れた/人工関節や最近の関節注射・手術後に急に痛みや腫れが強くなった | 救急外来または当日受診できる医療機関へ |
| 当日〜数日以内 | 膝がロックして伸びない/膝崩れや強い不安定感がある/歩けるが痛みや腫れが続く/夜間や安静時にも強く痛む | 早めに整形外科へ。悪化する場合は受診を前倒し |
| 短期間の経過観察が可能なこともある | 痛みが軽く歩ける/腫れがわずか/発熱・赤み・しびれがなく、日ごとに改善している | 1〜2日程度セルフケア。悪化、停滞、再発なら受診 |
札幌市など対象地域にお住まいで、救急車を呼ぶか迷う場合は、24時間対応の「救急安心センターさっぽろ」#7119(IP電話などは011-272-7119)へ相談できます。明らかに緊急性が高い場合は、#7119を介さず119番へ連絡してください。
急に強くなる膝の痛みとは
「急に強くなった膝の痛み」には、数時間〜数日で新たに始まった痛みと、以前からある膝痛が急激に悪化した状態の両方が含まれます。転倒やスポーツなどの明らかなけがだけでなく、感染、結晶による関節炎、変形性膝関節症の炎症、骨の小さな損傷、血管の病気でも起こります。
痛みの場所だけで原因を決めることはできません。また、レントゲンで変形性膝関節症が見つかっても、今回の急な痛みがすべて変形によるものとは限りません。反対に、レントゲンの変化が軽くても、感染や骨折など早い対応が必要な病気が隠れていることがあります。
膝の痛みが急に強くなる主な原因
主な原因は、外傷、急性関節炎、感染、変形性膝関節症や半月板の悪化、軟骨下脆弱性骨折、血管の病気です。似た症状が重なるため、表だけで自己診断せず、経過と診察、必要な検査を組み合わせて判断します。
| 症状・きっかけ | 考えられる主な原因 | 注意点 |
|---|---|---|
| 転倒、衝突、ひねりの直後から痛む | 骨折、脱臼、靱帯損傷、半月板損傷、腱断裂 | 変形、荷重不能、急速な腫れ、膝崩れは早めに受診 |
| けががないのに急に赤く腫れ、熱を持つ | 偽痛風、痛風、化膿性関節炎 | 見た目だけでは感染との区別が難しい |
| 以前からの膝痛が運動後などに急に悪化 | 変形性膝関節症の炎症、変性半月板損傷、関節内遊離体 | 別の急性疾患が重なっていないか確認する |
| 中高年で、大きなけががないのに荷重時痛が急に出た | 軟骨下脆弱性骨折、半月板後根損傷など | 初期のレントゲンが正常でもMRIで分かる場合がある |
| 膝裏からふくらはぎが腫れて痛む | ベーカー嚢腫の破裂、筋損傷、深部静脈血栓症 | 片脚の腫れ、熱感、長時間の不動や手術後は血栓に注意 |
| 足先が急に冷たい、白い、しびれる | 急性下肢虚血などの血流障害 | 脚を守るため緊急評価が必要 |
外傷による骨折・靱帯損傷・半月板損傷
転倒、スポーツ中の方向転換、交通事故などの後に急に痛んだ場合は、骨折や靱帯、半月板、腱の損傷を考えます。「ブチッ」という音、短時間で大きくなる腫れ、膝崩れ、体重をかけられない状態は重要な手がかりです。膝の皿が外れたように見える場合も、自分で戻そうとせず受診してください。
偽痛風・痛風などの結晶性関節炎
偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶によって起こる急性関節炎で、高齢者の膝に比較的多くみられます。痛風も膝に起こることがあり、急な腫れ、熱感、強い痛みを生じます。確定には関節液中の結晶の確認が役立ちますが、結晶が見つかっても細菌感染の併存は否定できません。
化膿性関節炎
化膿性関節炎は、細菌が関節内に入り、強い炎症を起こす病気です。赤み、熱感、腫れ、動かしたときの強い痛み、発熱や悪寒が代表的ですが、発熱がなくても感染は否定できません。高齢者、糖尿病や免疫を抑える治療中の方、人工関節がある方、最近膝の注射や手術を受けた方では特に注意が必要です。疑う場合は速やかな関節液検査と治療が必要です(SANJOガイドライン)。
変形性膝関節症・変性半月板損傷の急な悪化
変形性膝関節症では、歩き過ぎや立ち座りの反復をきっかけに炎症が強まり、水がたまって痛みが増すことがあります。加齢に伴う半月板の傷みも、軽いひねり動作で症状が急に出ることがあります。ただし、MRIで半月板損傷が見つかっても、損傷が今回の痛みの主因とは限りません。診察所見と痛みの場所、動作、画像を合わせて判断します。
軟骨下脆弱性骨折
軟骨下脆弱性骨折とは、関節軟骨のすぐ下にある骨が、明らかな大けががなくても損傷する病態です。中高年で突然痛み始め、体重をかけると強く痛むほか、安静時や夜間にも痛むことがあります。初期にはレントゲンで分からないことがあり、疑う場合はMRIが診断に役立ちます。痛みを我慢して歩き続けると病変が進む場合があるため、早めの評価が大切です(査読レビュー)。
深部静脈血栓症・急性下肢虚血
深部静脈血栓症は脚の深い静脈に血のかたまりができる病気で、片脚の腫れ、ふくらはぎの痛み、熱感、皮膚色の変化などがみられます。長時間の移動や安静、手術後、がん治療中、過去の血栓症などはリスクになります。息苦しさや胸痛が加わる場合は、血栓が肺へ移動した肺塞栓症の可能性があり、緊急対応が必要です(CDC)。
一方、動脈の血流が急に途絶える急性下肢虚血では、突然の強い脚の痛み、足先の冷感、蒼白、しびれ、動かしにくさなどが起こります。膝の病気と思い込まず、119番を検討してください(ACC/AHAガイドライン)。
自分で確認できるポイント
受診時に役立つのは、「いつ・何をして始まったか」「どのくらい腫れたか」「全身症状や脚全体の変化があるか」です。無理に膝を曲げたり、痛みを再現する動作を繰り返したりする必要はありません。
- 転倒、ひねり、運動、長時間の歩行などのきっかけはあったか
- 痛みは突然か、数時間かけて強くなったか
- 膝が赤い、熱い、大きく腫れている、傷があるか
- 発熱、悪寒、吐き気、強いだるさがあるか
- 支えなしで立てるか、数歩歩けるか
- 膝を完全に伸ばせるか、途中でロックしないか
- 左右のふくらはぎの太さ、色、熱感に差があるか
- 足先の色、温度、感覚、動かしやすさに左右差があるか
- 人工関節、最近の関節注射や手術、皮膚の感染、抗凝固薬の使用があるか
症状が変化する場合は、発症時刻、腫れの広がり、体温をメモしておくと診察に役立ちます。膝や脚の写真も、時間経過を伝える補助になります。
受診までに自宅でできる対策
危険な症状がなく軽症の場合は、痛む動作を中止し、膝への負荷を減らしてください。セルフケアで診断や受診を遅らせないことが重要です。
- 負荷を減らす:運動や長距離歩行を中止し、必要なら杖や手すりを使います。
- 冷やす:急な腫れや熱感がある場合は、保冷剤をタオルで包み、15〜20分を目安に冷やします。皮膚の感覚が鈍い方や血流障害がある方は避けてください。
- 脚を少し高くする:横になれる場合は、楽な姿勢で脚を支えます。
- 薬を確認する:市販の鎮痛薬は腎臓病、胃潰瘍、喘息、心疾患、抗凝固薬との相互作用などに注意が必要です。持病や服薬がある方は医師・薬剤師に確認してください。
避けたいのは、痛みを我慢した強いストレッチ、無理な屈伸、強いマッサージ、自己流での関節の整復です。膝やふくらはぎが赤く熱を持っている場合は温めず、血栓が疑われる片脚の腫れを強くもまないでください。感染が疑われる段階で、手元に残った抗菌薬を自己判断で飲んだり、関節注射だけで様子をみたりすることも避けましょう。
整形外科ではどのような検査をするか
診察では、外傷、感染、結晶性関節炎、骨や半月板の損傷、血管の病気を順に見分けます。すべての方に同じ検査を行うのではなく、発症の経過と診察所見から必要な検査を選びます。
問診と診察
痛みの始まり方、けがの有無、腫れの速さ、発熱、最近の注射や手術、持病、服薬を確認します。膝の熱感、関節液、圧痛、曲げ伸ばし、不安定性に加え、ふくらはぎの腫れ、足先の血流や感覚も評価します。
レントゲン
骨折、脱臼、変形性膝関節症、石灰化などを確認する基本検査です。外傷後に局所の強い圧痛、関節の腫れ、荷重困難がある場合は、まずレントゲンが検討されます。ただし、半月板や靱帯、初期の軟骨下脆弱性骨折はレントゲンだけでは分からないことがあります(ACR画像検査基準)。
MRI
MRIは、半月板、靱帯、軟骨、骨髄の変化、レントゲンに写りにくい骨折などの評価に役立ちます。急性半月板損傷の診断ではMRIが優先されますが、感染や血栓を疑う場合は、MRIより先に関節液検査や血管超音波などが必要になることがあります(AAOS診療ガイドライン)。
超音波検査
超音波では、関節液、滑膜の腫れ、腱の損傷、ベーカー嚢腫などをその場で確認できます。血栓が疑われる場合は、血管を対象とした超音波検査が行われます。関節液を採取するときの針の位置確認にも利用できます。
血液検査と関節液検査
発熱や強い腫れがある場合は、炎症反応などを血液検査で確認します。ただし、血液検査が正常でも化膿性関節炎を完全には否定できません。感染が疑われる場合は、膝から関節液を採取し、細菌培養、細胞数、結晶などを調べます。関節液検査は、感染と偽痛風・痛風を見分けるうえで重要です。
急に強くなった膝痛の治療方法
治療は原因によって大きく異なります。鎮痛薬や注射で一時的に痛みを抑える前に、感染、骨折、血栓、血流障害などを除外することが重要です。
- 骨折・脱臼・靱帯や腱の損傷:固定、免荷、整復、リハビリテーションを行い、損傷の種類やずれ、不安定性によって手術を検討します。
- 化膿性関節炎:関節液を採取して細菌を調べ、抗菌薬と関節内の洗浄・排液を行います。入院や手術が必要になることがあります。
- 偽痛風・痛風:感染の可能性を評価したうえで、腎機能や持病に合わせて消炎鎮痛薬などを選びます。
- 変形性膝関節症・非転位型の半月板損傷:負荷調整、薬物療法、運動療法、装具や注射などを組み合わせます。
- 軟骨下脆弱性骨折:病変の大きさや骨の状態に応じて荷重を制限し、経過を画像で確認します。骨の陥没や変形が進んだ場合は手術を検討することがあります。
- 深部静脈血栓症・急性下肢虚血:血管の検査を行い、抗凝固療法や血流を再開させる治療などを検討します。整形外科以外の専門科との連携が必要です。
急な膝痛に手術は必要ですか?
痛みが強いだけで、すぐに手術が必要と決まるわけではありません。偽痛風や痛風、変形性膝関節症の炎症などは、手術をせずに改善を目指せることが多くあります。一方、ずれの大きい骨折や脱臼、腱断裂、強い不安定性、膝が伸びない転位した半月板損傷、化膿性関節炎、脚の血流障害などでは、早い手術や処置が必要になる場合があります。
手術の要否は、年齢だけで決めません。損傷の種類、関節の安定性、感染の有無、画像所見、仕事内容、スポーツ、日常生活への支障、これまでの治療歴を踏まえて判断します。
まとめ|受診を急ぐ症状を見逃さないことが大切
- 発熱を伴う赤く熱い膝、外傷後の変形や荷重不能、急速な腫れは当日中の受診が目安です。
- 胸痛・息苦しさ、足先の冷感・蒼白・しびれ・動かしにくさは119番を検討してください。
- 急な膝痛の原因には、外傷、偽痛風・痛風、感染、変形性膝関節症、軟骨下脆弱性骨折、血栓などがあります。
- レントゲン所見と痛みの原因が一致しないことがあり、MRI、超音波、関節液検査が必要な場合があります。
- 軽症でも改善しない、繰り返す、夜間や安静時にも強く痛む場合は、整形外科で原因を確認しましょう。
膝の痛みが急に強くなったときのよくある質問
Q1. 夜中に急に膝が痛くなったら救急外来へ行くべきですか?
夜間痛だけで緊急とは限りません。ただし、赤み・熱感・急な腫れ・発熱、歩けないほどの痛み、足先の冷感やしびれがあれば、夜間でも救急受診を検討してください。
Q2. 発熱がなければ化膿性関節炎ではありませんか?
発熱がなくても化膿性関節炎は否定できません。膝が急に赤く熱を持って腫れ、動かすと強く痛む場合は、特に高齢者や免疫が低下している方では早めの受診が必要です。
Q3. 歩けるなら膝が腫れていても様子を見てよいですか?
歩けても、急速な腫れ、赤み、熱感、発熱があれば当日中の受診が安全です。腫れが軽く改善傾向なら短期間の経過観察も可能ですが、数日で改善しない場合は整形外科へ相談してください。
Q4. 膝の注射後に痛みと腫れが強くなりました。よくある反応ですか?
一時的な注射後反応のこともありますが、感染との区別が必要です。痛みが増え続ける、赤く熱を持つ、腫れが強い、発熱や悪寒がある場合は、施術した医療機関へ当日中に連絡してください。
Q5. 血液をサラサラにする薬を飲んでいて、膝が急に腫れました。どうすればよいですか?
関節内出血などの可能性があるため、早めに医療機関へ相談してください。薬を自己判断で中止すると血栓症の危険が高まる場合があります。中止や変更は処方医の指示を受けましょう。
Q6. 急に痛い膝は冷やすのと温めるのと、どちらがよいですか?
急な腫れや熱感がある場合は、まず短時間の冷却が無難です。タオル越しに15〜20分程度とし、赤く熱い膝、発熱、強い腫れがある場合は、温めて様子を見ず受診してください。
Q7. レントゲンで異常なしなら心配ありませんか?
レントゲンが正常でも原因が残ることがあります。半月板・靱帯損傷、初期の軟骨下脆弱性骨折、感染などは、MRI、超音波、関節液検査などで初めて分かる場合があります。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

参考文献・公的情報
- 国立長寿医療研究センター「膝関節の痛みと治療について」
- Ravn C, et al. Guideline for management of septic arthritis in native joints (SANJO). JBJI. 2023.
- Ochi J, et al. Subchondral insufficiency fracture of the knee. Japanese Journal of Radiology. 2022.
- American College of Radiology. ACR Appropriateness Criteria: Acute Trauma to the Knee.
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Acute Isolated Meniscal Pathology CPG. 2024.
- CDC. About Venous Thromboembolism.
- 2024 ACC/AHA Guideline for the Management of Lower Extremity Peripheral Artery Disease.
- 日本整形外科学会「痛風」
- 札幌市「救急安心センターさっぽろ」
※本記事は一般的な医療情報を提供するもので、個別の診断を行うものではありません。症状が強い場合や判断に迷う場合は、医療機関へご相談ください。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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