
コラム COLUMN
スポーツ外傷 ゴルフ後に肘や手首が痛い?スイング障害の原因と対策を専門医が解説

この記事の内容
ゴルフのあと、肘や手首がズキズキ……そんな経験ありませんか?
「最近、ゴルフの翌日に肘が痛くてクラブを持つのもつらい」「手首の内側がジンジンして家事がしんどい」
――そんな声を、当院にもよくいただきます。
特に50代以降のゴルファーに多く見られるこの症状は、「年のせいかな」と見過ごされがちですが、実は“スイング障害”と呼ばれる状態かもしれません。
今回は、ゴルフ後に起きる肘や手首の痛みの原因と、その対処法について、整形外科専門医の立場からわかりやすく解説します。
どんなときに痛みが出やすい?
多くの方が「フルスイングをした後に違和感が出る」「ラウンド翌日の朝が特につらい」と話されます。
具体的にはこんな動作で痛みが出やすくなります。
- スイング時に肘や手首に力が入ったとき
- ダフったり、打ち損じたりしたとき
- 長時間のラウンド後や練習後
- 片手に強く力が入るアプローチ練習を繰り返したとき
これらはすべて、肘や手首の関節・筋肉・腱に負担が集中することで起こります。
痛みの原因は「スイング障害」かも?
ゴルフに起因する肘や手首の痛みには、いくつか代表的な原因があります。
1. ゴルフ肘(内側上顆炎)
手のひらを上に向けたときの肘の内側が痛む場合、これに該当します。スイング時に使う前腕の筋肉が骨にくっついている部分に炎症が起きている状態です。特に右打ちの人では、左肘に出ることが多いです。
2. テニス肘(外側上顆炎)
逆に肘の外側が痛む場合はこちら。テニス肘と呼ばれますが、実際にはゴルファーにも非常に多く見られます。特にクラブをしっかり握る人に出やすい傾向があります。
3. 手首の腱鞘炎
手首の親指側や手のひら側が痛む方は、スイング時の「手打ち」が原因になっている可能性も。フェースを返す動作が強すぎると、手首の腱に負担がかかります。
対策・治療法は?自分でできるケアから専門治療まで
1. まずは「安静」と「冷却」
痛みがあるときは無理をせず、使いすぎた部位を休ませることが第一です。冷やすことで炎症を抑える効果もあります。
2. サポーターやテーピングの活用
肘や手首の負担を軽減するためのサポーターは、市販品でも効果的です。スイング時の痛みが気になる場合、まずは使用してみるのもよいでしょう。
3. ストレッチ・リハビリ運動
肘や手首の周囲の筋肉をほぐすことで、負担を軽減できます。以下のようなストレッチを取り入れてみましょう:
- 肘を伸ばした状態で手のひらを反らすストレッチ
- 前腕の筋肉をほぐすマッサージ
- 手首回し運動で関節の柔軟性アップ
無理なく毎日続けることが大切です。
4. 病院での保存療法
痛みが長引く場合は、整形外科での診察をおすすめします。当院では以下のような保存療法を行っています:
- 炎症を抑える注射や内服薬
- 物理療法(温熱・電気治療)
- スイングやフォームのアドバイス
必要に応じて理学療法士とのリハビリ指導も行います。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q:痛いときは、ゴルフを完全にやめないとダメ?
A:無理をするのはNGですが、軽い練習やスイングチェック程度ならOKな場合もあります。医師の判断を仰ぎましょう。
Q:湿布だけで治るものですか?
A:初期であれば湿布も有効ですが、原因そのもの(フォームや筋肉の使い方)を見直すことが重要です。
Q:再発しないために気をつけることは?
A:体の柔軟性を保ち、正しいフォームを意識することが何よりの予防になります。使いすぎのサインにも敏感になりましょう。
「年齢のせい」とあきらめないでください
ゴルフは生涯スポーツとして楽しめる素晴らしい運動です。
しかし、関節や腱に負担をかけるスポーツでもあります。
「年齢のせい」「練習不足のせい」と自己判断せず、少しでも気になる痛みがあれば、早めに整形外科での診察を受けることをおすすめします。
当院にも、肘や手首の痛みで来院され、適切なケアやアドバイスによってゴルフを続けられるようになった方が多数いらっしゃいます。
ゴルフをずっと楽しむために、体の声に耳を傾け、適切な対策を取りましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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