
コラム COLUMN
股関節 股関節がポキポキ鳴る?音がする原因と対処法を専門医が解説

「歩くときに股関節からポキポキ音がする」「動かすとカクッと音が鳴って心配になる」――こんな経験をしたことはありませんか?
多くの方が「年齢のせいかな」「放っておいて大丈夫かな」と不安を抱えています。特に50〜80代の方にとって、股関節の違和感は生活の質に直結するため、とても気になる症状です。この記事では、整形外科専門医の立場から股関節の音の原因と対処法をやさしく解説します。
この記事の内容
股関節の音が気になるのはどんなとき?
患者さんからよく聞かれるのは次のような場面です。
- 椅子から立ち上がるときにポキッと鳴る
- 階段を上がるときにコキコキと音がする
- 股関節を回すストレッチ中にカクカクする
- 痛みはないけれど、繰り返し音がして不安
音があるからといって必ず病気とは限りませんが、場合によっては治療が必要なこともあります。
股関節の音の原因は?
股関節の音にはいくつかの原因が考えられます。大きく分けると「生理的なもの」と「病的なもの」があります。
1. 生理的な音(心配のいらない場合)
- 関節内の気泡:関節液の中に小さな気泡ができてはじけるとポキッと鳴ります。指の関節を鳴らすときと同じ仕組みで、痛みがなければ心配はいりません。
- 腱や筋肉の擦れ:股関節の周囲には大きな筋肉や腱があります。動作の際に腱が骨の出っ張りに一時的に引っかかり、弾かれるように音が出ることがあります。
2. 病的な音(注意が必要な場合)
- 股関節唇損傷:関節を支える軟骨(関節唇)が傷つくと、引っかかる音や痛みが出ることがあります。
- 変形性股関節症:加齢などで軟骨がすり減ると、ギシギシした音や痛みを伴うことがあります。
- 炎症や腱鞘炎:股関節周囲の腱や滑液包に炎症が起きると、痛みを伴う音が出やすくなります。
対処法と予防のポイント
音の原因によって対応は異なりますが、一般的に次のような工夫が役立ちます。
1. 保存療法(手術以外の治療)
- 安静と生活習慣の工夫
痛みがあるときは無理をせず、関節に負担の少ない動作を心がけましょう。 - 運動療法・ストレッチ
股関節周囲の筋肉をやわらかく保つことは、音や違和感の予防につながります。特に太ももの前側・お尻・内ももの筋肉をバランスよく動かすのがおすすめです。 - 体重管理
体重が増えると股関節にかかる負担も大きくなります。無理のない範囲で体重をコントロールしましょう。
2. 医療機関での治療
- 関節注射(ヒアルロン酸など)
炎症や痛みを抑える効果が期待できます。 - 再生医療(PRP・幹細胞治療)
症例によっては、関節の修復や炎症の改善を目指す治療が選択肢になることもあります。 - 手術療法
変形性股関節症が進行している場合は、人工関節置換術などが検討されます。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 股関節がポキポキ鳴っても痛みがなければ大丈夫?
A. 多くの場合は心配いりません。ただし、音と同時に痛みや動かしにくさがある場合は、病院での検査をおすすめします。
Q2. 音が出るときは運動を控えた方がいい?
A. 強い痛みがある場合は控えましょう。痛みがなければ、ストレッチや軽い運動はむしろ予防に役立ちます。
Q3. 変形性股関節症の初期症状として音が出ることはありますか?
A. あります。特に「音+痛み」があるときは早めの受診が安心です。
Q4. 股関節を鳴らすクセは悪影響がありますか?
A. 無理に鳴らすのはおすすめできません。関節や腱に余計な負担がかかる可能性があります。
まとめ
股関節のポキポキ音は、多くの場合は心配のいらない「生理的な音」です。ただし、痛みや動きの制限を伴うときは病気のサインかもしれません。
「年齢のせいだから仕方ない」と諦める必要はありません。早めの受診と正しい対処で、快適な生活を取り戻すことができます。股関節の音や痛みが気になる方は、まずは整形外科で相談してみましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。


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