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膝 変形性膝関節症で手術と言われたら?手術を回避するために今すぐ始めるべき5つの対策を専門医が解説

階段の上り下りで膝がズキッと痛む、正座が辛くなってきた、最近は歩き出しに膝がこわばる。そんな症状を抱えながら、いつかは手術をしなければならないのかと不安を感じている方は非常に多いものです。
私のクリニックにも、他院で「もう軟骨がないから、人工関節の手術をするしかないですね」と言われ、ショックを受けて相談に来られる方がよくいらっしゃいます。50代、60代、そして70代、80代。人生100年時代と言われる現代において、自分の足で歩き続けたいという願いは切実です。
結論から申し上げます。変形性膝関節症と診断されたからといって、すぐに諦める必要はありません。適切な知識を持ち、日々の生活を少し変えるだけで、手術を回避し、痛みをコントロールしながら元気に過ごせる可能性は十分にあります。
今回は、関節の再生医療を専門とする整形外科医の視点から、手術を避けるために今すぐ実践してほしい5つの事をお伝えします。
この記事の内容
変形性膝関節症とは?なぜ痛みが出るのか
膝の痛みの原因として最も多いのが変形性膝関節症です。これは、膝の関節にある軟骨(クッションの役割をする組織)がすり減り、関節の中で炎症が起きたり、骨同士がぶつかったりすることで痛みが生じる病気です。
よく「軟骨には神経がないのに、なぜ痛むのですか?」という質問をいただきます。実は、痛みを感じているのは軟骨そのものではなく、関節を包んでいる膜(滑膜といいます)の炎症や、軟骨がなくなったことで負担がかかっている周囲の骨、筋肉、靭帯なのです。
ドアの蝶番(ちょうつがい)をイメージしてみてください。長年使っていると油が切れて動きが悪くなり、ギシギシと音が鳴り始めますよね。膝も同じです。加齢や負担の積み重ねで滑らかさが失われ、周囲の組織が悲鳴を上げている状態が、皆さんが感じているその痛みです。
手術を避けるために今すぐすべき5つの事
手術を回避するためには、膝にかかる負担を減らし、膝を支える力を強めることが基本となります。今日からできる具体的な対策を見ていきましょう。
1. 膝への負担を劇的に減らす「体重管理」
耳が痛い話かもしれませんが、体重管理は最も効果的な治療法の一つです。歩いているとき、膝には体重の約3倍から5倍の負荷がかかると言われています。
つまり、体重が1キロ減るだけで、歩く際の一歩ごとに膝にかかる負担は3キロから5キロも軽くなる計算です。これは膝にとって非常に大きなプレゼントになります。
無理なダイエットをする必要はありません。まずは今の体重を1キロ、2キロ減らすことを目標にしてみましょう。それだけで、階段の上り下りや立ち上がりの際の痛みが和らぐのを実感できるはずです。
2. 膝を守る天然のサポーター「太ももの筋肉」を鍛える
膝の関節は、周囲の筋肉によって支えられています。特に重要なのが、太ももの前側にある大きな筋肉(大腿四頭筋といいます)です。この筋肉は、歩くときの衝撃を吸収するクッションの役割を果たしてくれます。
変形性膝関節症の方は、痛みがあるために動かなくなり、その結果として筋肉が落ち、さらに膝への負担が増えるという悪循環に陥りがちです。
自宅で簡単にできるトレーニングとして「脚上げ運動(スクワットが辛い方におすすめ)」があります。仰向けに寝た状態で、片方の膝を伸ばしたまま床から10センチほど上げ、5秒間キープして下ろす。これを左右交互に10回ずつ行うだけでも、膝を支える力は確実に養われます。
3. 関節を固まらせない「可動域の維持」
痛みがあると、どうしても膝を曲げ伸ばししなくなります。しかし、関節は動かさないとどんどん硬くなり、さらに動きが悪くなるという特性があります。
無理に正座をする必要はありませんが、お風呂上がりなどの体が温まっているときに、優しく膝を曲げ伸ばしするストレッチを取り入れてください。関節を包む袋が硬くなるのを防ぎ、関節液(潤滑油のような液)の循環を良くすることで、痛みの出にくい状態を作ることができます。
4. 足元からバランスを整える「靴選びとインソール」
膝の痛みは、足元のバランスからも影響を受けます。変形性膝関節症の多くは、膝の内側がすり減る「O脚」タイプです。
この場合、足の外側を少し高くしたインソール(靴の中敷き)を使用することで、膝の内側にかかる荷重を外側に逃がし、痛みを軽減できることがあります。
また、底が薄すぎる靴や、かかとの安定しないサンダルは膝への衝撃を強めてしまいます。クッション性があり、かかとをしっかりと支えてくれるウォーキングシューズを選ぶだけでも、歩行時の安心感は大きく変わります。
5. 現在の治療法を見直し、最適な選択をする
これまで、整形外科でどのような治療を受けてこられましたか?多くの病院で行われているのが、ヒアルロン酸の関節注射です。
もちろん、ヒアルロン酸注射で一時的に痛みが引く方もいらっしゃいます。しかし、残念ながらヒアルロン酸はあくまで「一時的な潤滑油」に過ぎません。すり減った軟骨が再生するわけではなく、炎症が強い場合には、打ってもすぐに効果が切れてしまうことも多いのです。
毎週のようにヒアルロン酸を打ち続けているのに状況が変わらないのであれば、その治療法に限界が来ているサインかもしれません。漫然と同じ治療を繰り返すのではなく、今の自分の膝の状態に本当に合っているのか、一度立ち止まって考えてみることが大切です。
近年では、手術と従来の保存療法(リハビリや注射)の間に位置する治療として、ご自身の血液や細胞を用いた「再生医療」という選択肢も広がっています。こうした新しい選択肢があることを知るだけでも、心の余裕に繋がります。

よくある質問と誤解への回答
膝の悩みについて、患者さんからよくいただく質問にお答えします。
膝が痛いときは、安静にして動かさないほうがいいですか?
基本的には、痛みが強すぎる時期を除いて、適度に動かしたほうが良いです。 全く動かさないでいると、先ほどお伝えしたように筋肉が衰え、関節が硬くなってしまいます。 「痛みが強くならない範囲での散歩」や「水中ウォーキング」などは、軟骨への栄養供給を促し、症状の悪化を防ぐ効果があります。ただし、歩いた後に膝が熱を持ったり、痛みが翌日まで残ったりする場合は負荷が強すぎます。その加減については、専門医と相談しながら進めるのがベストです。
軟骨は一度すり減ったら、二度と元に戻らないのでしょうか?
現代の医学において、すり減った軟骨を完全に元の若々しい状態に戻すことは、まだ非常に困難です。 しかし、痛みを取り除き、進行を遅らせることは十分に可能です。また、再生医療の分野では、炎症を抑えて関節内の環境を整えることで、痛みのない生活を取り戻す成果が出ています。軟骨の「形」を元通りにすることに執着するよりも、膝を「痛みなく快適に使える機能」を維持することに注目しましょう。
水が溜まるのは、抜かないほうがいいと言われましたが本当ですか?
「膝の水を抜くと癖になる」という話をよく聞きますが、これは誤解です。 水(関節液)が溜まるのは、関節内で強い炎症が起きているからです。炎症の結果として水が溜まるのであって、抜くから溜まるわけではありません。むしろ、炎症を起こした水を放置すると、その中の成分がさらに軟骨を傷つけてしまうことがあります。 溜まっている量が多い場合は、一度抜いて圧迫感を取り除き、なぜ水が溜まったのかという原因(炎症の元)に対する治療を行うことが重要です。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

年齢のせいと諦める前に
「もう年だから仕方ない」「手術しかないと言われた」 そう言って肩を落として私のクリニックを訪れる方に、私はいつもこうお伝えしています。 「膝の痛みは、体があなたに送っているサインです。でも、それは諦めるためのサインではなく、ケアの仕方を変えるためのサインですよ」と。
変形性膝関節症は、確かに長い時間をかけて進行していく病気です。しかし、今日お話しした5つの対策を意識するだけで、進行のスピードを緩め、手術という大きな決断をずっと先に延ばしたり、回避したりすることは可能です。
階段を下りるのが怖くなくなったら、何をしたいですか? お孫さんと一緒に旅行に行きたい、昔のように散歩を楽しみたい。そんな皆さんの前向きな願いを、私は全力で応援したいと思っています。
膝の痛みは、一人で抱え込む必要はありません。まずは身近な生活習慣の見直しから始めてみましょう。そして、今の治療に不安があるときは、遠慮なく専門医に相談してください。
あなたの膝は、まだまだあなたを支えてくれるはずです。未来の自分に、元気な足腰をプレゼントしてあげましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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