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膝 膝をかばうと反対側が痛くなる?バランスの崩れに注意!専門医が教える原因と対策

こんにちは。整形外科専門医の院長です。日々の診察の中で、多くの患者さんからお話を伺っていますが、最近このようなご相談をよく受けます。
「最初は右の膝が少し痛むくらいだったのに、気づいたら左の膝までズキズキ痛むようになってしまって……」 「痛い方の足をかばって歩いていたら、反対側の足や腰まで痛くなってきて、もうどうしていいかわかりません」
片方の膝をかばっているうちに、なぜか反対側の膝や別の場所まで痛くなってしまう。実はこれ、50代から80代の多くの方が経験される非常によくあるお悩みです。
最初は小さな違和感だったはずが、いつの間にか両方の膝が痛くなり、歩くことすら億劫になってしまうのは本当につらいことですよね。旅行に行きたい、お買い物に行きたいという前向きな気持ちも、膝の痛みのせいで阻まれてしまうかもしれません。
なぜ、片方の膝をかばうと反対側まで痛くなってしまうのでしょうか。今回はその理由と、身体のバランスを整えて痛みの連鎖を断ち切るための具体的な方法を、専門医の視点からわかりやすく丁寧にお伝えします。
この記事の内容
なぜ片方の膝をかばうと反対側も痛くなるの?
身体のバランスが崩れる仕組み
私たちの身体は、家でいう「大黒柱」や「土台」のように、左右が均等に支え合うことで絶妙なバランスを保っています。しかし、どちらか片方の膝に痛みが出ると、人間は無意識のうちにその痛みを避けようとします。
たとえば、右膝が痛いときは、歩くときに右足に体重をかけないようにして、左足にばかり体重を乗せてしまいますよね。これが「かばう」という動作です。
一時的な怪我であれば、かばっていても問題はありません。しかし、数ヶ月から数年という長い期間、片方をかばい続けるとどうなるでしょうか。本来なら左右で50%ずつ分担すべき体重が、痛みのない健康な側の膝に70%も80%もかかってしまうことになります。これでは、もう片方の膝が悲鳴を上げてしまうのも当然です。
筋肉の衰えと関節への負担
さらに恐ろしいのは、痛む方の膝を使わないことで、その足の筋肉がどんどん細く、弱くなってしまうことです。特に太ももの前側にある大きな筋肉は、膝にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
痛いからといって動かさないでいると、クッションである筋肉が減ってしまい、次にその足を着いたときには関節へダイレクトに衝撃が伝わるようになります。
一方で、かばっている反対側の足は、常に過度な重労働を強いられている状態です。結果として、両方の足のバランスが完全に崩れ、両膝ともに関節の軟骨がすり減りやすい環境が作られてしまうのです。

膝の痛みが引き起こす日常生活への影響
歩き方の変化と二次的な痛み
片方の膝をかばった歩き方を続けていると、歩行の姿勢そのものが歪んできます。身体を左右に揺らすようにして歩いたり、片方の足を引きずるようにして歩いたりするようになります。
このような不自然な歩き方は、膝だけでなく、腰や股関節(足の付け根の関節)にも不自然なひねりや負担を加えることになります。
「膝の痛みを放置していたら、今度は腰が痛くて椅子から立ち上がれなくなった」という声をよく聞くのはこのためです。一つの関節のトラブルが、ドミノ倒しのように身体全体のあちこちに痛みを広げていってしまうのです。
外出が億劫になる悪循環
膝が両方とも痛くなってくると、階段の上り下りや、敷居をまたぐといった何気ない動作すら苦痛になります。
「痛いから歩きたくない」 「歩かないから足の筋肉がさらに落ちる」 「筋肉が落ちるから、余計に膝が痛くなる」
このような悪循環に陥ってしまうと、気持ちまで沈んでしまい、外出や趣味を諦めて家に閉じこもりがちになってしまいます。これは身体の健康だけでなく、心の元気まで奪ってしまう大きな問題です。
クリニックで行う一般的な治療法と注意点
湿布や飲み薬による痛みのコントロール
病院を受診すると、まずは痛みを和らげるために消炎鎮痛剤(痛みを抑える薬)や湿布が処方されることが多いです。これらは「今ある強い痛み」を一時的に抑え、日常生活を送りやすくするためには有効な手段です。
ただし、これらはあくまで痛みの感覚を和らげるものであり、膝の軟骨がすり減っている原因そのものを根本から治すわけではありません。薬に頼りすぎて無理をしてしまうと、気づかないうちに病状が進行することもあるため、適切な使用が大切です。
関節注射(ヒアルロン酸など)との付き合い方
整形外科の現場でよく行われるのが、膝の関節内に潤滑油のような成分を注入する関節注射です。よく使われるものとしてヒアルロン酸注射などがあります。
この注射を受けると、一時的に膝の動きが滑らかになったり、痛みが軽くなったりすることがあります。しかし、これもしばしば誤解されがちですが、すり減った軟骨が元通りに再生するわけではありません。何度も注射を繰り返しているうちに、だんだんと効果を感じにくくなる患者さんも少なくありません。
注射はあくまで一時的な「時間稼ぎ」や「痛みの緩和」として捉え、それに依存するのではなく、次に紹介する運動や生活習慣の改善を並行して行うことが何よりも重要です。
今日からできる!自宅でのバランス改善と予防法
太ももの筋肉を鍛える簡単ストレッチ
膝への負担を減らすための最も確実な方法は、膝のクッションとなる太ももの筋肉を鍛えることです。痛みが強くても、座ったまま安全にできる運動をご紹介します。
椅子に深く腰掛け、片方の足を床と水平になるようにまっすぐ前に伸ばします。つま先は天井を向くように起こしてください。この状態のまま5秒間キープします。これを左右交互に10回ずつ、朝と晩に行ってみてください。
太ももの前側の筋肉にじわっと力が乗っているのを感じられれば大成功です。これなら膝の関節をゴリゴリと擦り合わせることなく、安全に筋肉だけを刺激することができます。
正しい歩き方と靴選びのポイント
歩くときは、歩幅をいつもより少しだけ広くし、かかとからしっかり着地することを意識しましょう。かかとから着地することで、足の裏全体で衝撃を分散できるようになります。
また、履いている靴の底を見てみてください。片側だけが異常にすり減っていませんか?すり減った靴を履き続けると、それだけで身体のバランスが強制的に崩されてしまいます。
クッション性が高く、足元をしっかり支えてくれるウォーキングシューズを選び、靴底が減ってきたら早めに交換するか、中敷き(インソール)を入れて調整することをお勧めします。

よくある質問・誤解への回答
膝が痛いときは、できるだけ動かさずに安静にしていた方がいいですか?
強い炎症があって、膝が熱を持って腫れているようなときは、数日間の安静が必要です。しかし、慢性的な鈍い痛みである場合は、動かさないでいると関節が硬くなり、周りの筋肉も衰えて逆効果になります。
痛みの出ない範囲で、先ほど紹介した足上げ運動を行ったり、お家の中で無理のない範囲で歩いたりして、意識的に身体を動かすようにしてください。
軟骨のすり減りは、サプリメントを飲めば治りますか?
テレビのCMなどでよく見る成分ですが、医学的には、口から摂取した成分がそのまま膝の軟骨として修復されるという明確な証拠(エビデンス)は不十分とされています。
サプリメントはあくまで健康を補助する食品です。過度な期待をして治療を遅らせるよりも、適切な運動や、専門医による正しい診断を受けることの方が、結果として膝の寿命を延ばすことにつながります。
サポーターは四六時中つけておいた方が安心ですか?
サポーターは、外出するときや、家事などで長く立つときなど、膝に負担がかかる場面に絞って使用するのが理想的です。
四六時中、寝るときまでつけていると、サポーターが筋肉の代わりをしてしまうため、自分の筋肉がますます怠けて衰えてしまいます。上手に頼りつつ、頼りすぎないメリハリが大切です。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:「年齢のせい」と諦めずに、一歩を踏み出しましょう
「もう高齢だから、膝が痛くなるのは仕方がない」 そう言って諦めてしまっていませんか?
確かに、年齢とともに軟骨が変化してくるのは自然なことです。しかし、今回お話ししたように、痛みの本当の原因が「片方をかばうことによるバランスの崩れ」や「筋肉の低下」であるならば、それは何歳からでも見直し、改善していくことができます。
大切なのは、痛みの連鎖が起きているサインを見逃さないことです。片方の膝をかばって反対側が痛くなってきたら、それは身体からの「これ以上バランスを崩さないで」という大切な警告です。
お一人で悩まずに、まずは信頼できる整形外科の医師に相談してみてください。あなたのこれからの人生が、痛みに邪魔されることなく、自分の足で行きたい場所へ行ける素敵な毎日であるよう、私たち医療従事者はいつでも応援しています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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