コラム COLUMN
膝 膝の痛みで階段がつらい人へ|原因と楽にするポイントを整形外科専門医が解説

「平地なら歩けるのに、階段を下りると膝がズキッとする」「駅では手すりのある階段を探してしまう」。診療現場では、このような相談をよく受けます。膝の痛みで階段がつらいと、外出そのものがおっくうになり、足の筋力まで低下しやすくなります。
階段で痛いからといって、すぐに手術が必要とは限りません。変形性膝関節症をはじめ、膝のお皿周辺の負担、筋力低下、半月板の傷みなど、原因はいくつかあります。負担を減らす動き方や適切な筋トレ、整形外科での保存療法によって、日常生活が楽になる可能性があります。
この記事では、階段で膝の痛みが出る原因、今日からできる対策、受診の目安、整形外科で行われる治療について分かりやすく解説します。
階段で膝が痛くなる主な原因
変形性膝関節症による関節の痛み
50代以降で多い原因が変形性膝関節症です。膝関節の軟骨が少しずつ傷み、関節に炎症や変形が生じる病気です。初期には、椅子から立つときや歩き始めに痛みを感じます。進行すると、歩くと痛い、階段がつらい、正座できないといった症状が目立ってきます。
階段では、体重を支えながら膝を深く曲げ伸ばしします。そのため、平地を歩くときよりも関節に負担がかかります。特に下りでは、体が急に落ちないように太ももの筋肉でブレーキをかけるため、痛みを感じやすくなります。
膝のお皿と太ももの骨の間に負担がかかっている
膝の前側やお皿の周囲が痛む場合は、膝蓋大腿関節という、お皿と太ももの骨の間の関節に負担が集中している可能性があります。階段の上り下り、しゃがむ動作、長時間座った後の立ち上がりで痛みやすいことが特徴です。
加齢による軟骨の変化だけでなく、太ももの筋力低下、膝のお皿の動き方、O脚やX脚、股関節の硬さなども関係します。膝だけを見るのではなく、足全体の動きや姿勢を確認することが大切です。
半月板や腱、筋肉の問題が隠れている
膝の内側や外側に限局した痛みがある場合は、半月板の傷みや、膝周囲の腱の炎症なども考えられます。半月板は、膝の中でクッションの役割をする組織です。加齢によって傷みやすく、明らかなけががなくても痛みが出ることがあります。
また、痛みを避けて歩くうちに、太ももの前側やお尻の筋肉が低下している人も少なくありません。筋肉が弱ると膝を安定させにくくなり、さらに階段がつらくなるという悪循環につながります。

膝の痛みを楽にする階段の使い方と自宅での対策
手すりを使い、一段ずつゆっくり移動する
痛みが強いときに、無理をして左右交互に階段を使う必要はありません。手すりを持ち、一段ずつ両足をそろえながら移動しましょう。上りは痛みの少ない足から、下りは痛い足から先に出すと、患側の膝にかかる負担を減らしやすくなります。
体を後ろに反らしたり、膝だけを内側へ入れたりすると、関節への負担が増えます。足先と膝をできるだけ同じ方向へ向け、急がずに体重を移すことがポイントです。エレベーターやエスカレーターを利用することも、悪化を防ぐための立派な工夫です。
太ももとお尻の筋肉を無理なく鍛える
膝を支える代表的な筋肉が、太ももの前側にある大腿四頭筋です。椅子に深く座り、片方の膝をゆっくり伸ばして5秒ほど保ちます。その後ゆっくり戻し、左右それぞれ5~10回から始めてください。
痛みが落ち着いている人には、椅子からゆっくり立ち上がり、ゆっくり座る運動も役立ちます。机や手すりにつかまり、膝が内側に入らない範囲で行います。深くしゃがむ必要はありません。運動中に鋭い痛みが出る場合や、翌日まで痛みや腫れが強く残る場合は、回数や負荷を減らしましょう。
膝だけでなく、ふくらはぎや太ももを伸ばす
膝の曲げ伸ばしが硬くなると、階段で必要な動きがしにくくなります。壁に手をつき、片足を後ろに引いてかかとを床につけると、ふくらはぎを伸ばせます。反動をつけず、20秒程度を目安に行ってください。
慢性的なこわばりには、入浴などで温めると動かしやすくなることがあります。ただし、膝が急に腫れて熱を持っているときは、温めすぎると症状が強くなる場合があります。そのようなときは運動を休み、タオル越しに短時間冷やしてください。

整形外科を受診する目安と主な治療
痛みが続く場合は原因を確認する
階段で痛い状態が2週間以上続く、少しずつ悪化している、歩く距離が短くなった、膝が腫れる、正座できないといった場合は、整形外科で一度確認することをおすすめします。
診察では、痛む場所、膝の動き、腫れ、筋力、歩き方などを確認します。必要に応じてレントゲンを撮影し、骨の変形や関節のすき間を評価します。半月板や靱帯などの状態を詳しく調べる場合には、超音波検査やMRIを追加することがあります。
まずは保存療法で痛みと動きを整える
保存療法とは、手術をせずに症状の改善を目指す治療です。運動療法やリハビリ、生活習慣の見直し、外用薬や内服薬、膝装具、足底板などを状態に応じて組み合わせます。体重が増えている場合は、急激な減量ではなく、食事と活動量を調整しながら少しずつ膝の負担を減らします。
ヒアルロン酸注射で一時的に痛みが楽になることはありますが、軟骨や関節そのものを元通りにする治療ではありません。何度も続ければ根本的に改善するとは限らないため、注射だけに頼らず、筋力や関節の動き、生活上の負担を一緒に見直すことが重要です。
急いで受診した方がよい症状
転倒や事故の後から体重をかけられない、膝が大きく腫れて変形している、発熱とともに赤く熱を持っている場合は、早めの受診が必要です。
また、膝が突然動かなくなった、何度も膝が崩れる、安静にしていても強く痛む、夜間痛が続く場合も放置しないでください。ふくらはぎの急な腫れや息苦しさを伴うときは、血管の病気なども考えられるため、速やかに医療機関へ相談しましょう。
膝の痛みと階段についてのよくある質問
Q1. 痛みがあるときは階段を使わない方がよいですか?
A. 強い痛みや腫れがある時期は、階段を減らして構いません。ただし、長期間まったく動かないと筋力が低下します。平地歩行や負担の少ない筋トレなど、痛みが増えない範囲の運動は続けましょう。
Q2. 階段の上りより下りの方が痛いのはなぜですか?
A. 下りでは、体重を支えながら太ももの筋肉でブレーキをかけます。そのため、膝のお皿周辺や関節に負担がかかりやすくなります。手すりを使い、一段ずつ下りると負担を減らせます。
Q3. 手術を避けるためには何をすればよいですか?
A. まず原因と変形の程度を確認し、筋トレ、ストレッチ、体重管理、薬、装具、リハビリなどの保存療法を組み合わせます。ただし、変形が強く日常生活への支障が大きい場合は、手術を含めて検討することもあります。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ
階段の負担を減らし、無理のない運動を続けましょう
膝の痛みで階段がつらい原因には、変形性膝関節症、膝のお皿周辺の負担、半月板の傷み、筋力低下などがあります。手すりを使う、一段ずつ移動する、太ももやお尻の筋肉を無理なく鍛えるといった対策から始めてみてください。
年齢のせいと諦めず、早めに原因を知ることが大切です
階段で膝が痛むことは、年齢だけで片づける必要はありません。早い段階で原因を確認し、自分の状態に合った保存療法や生活習慣の改善に取り組むことで、歩きやすさを保てる可能性があります。痛みが続く、腫れや動かしにくさがある場合は、無理を重ねる前に整形外科へ相談しましょう。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約


