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膝 正座ができない膝の痛みを解消!原因とセルフケア、治療法を整形外科専門医が解説

お孫さんとの遊びや、冠婚葬祭、趣味の茶道や華道。そんな大切な場面で「膝が痛くて正座ができない」と感じることはありませんか。
かつての日本では当たり前だった正座ですが、現代では膝への負担が大きすぎるとして敬遠されがちです。しかし、日本人にとって正座は単なる座り方ではなく、暮らしや文化に深く根付いたものです。「もう一度、当たり前のように正座ができるようになりたい」と願う方は、実は非常に多くいらっしゃいます。
昔は平気だったのに、最近は膝が突っ張って曲げられない。 正座をしようとすると、膝の裏に何かが挟まったような違和感がある。 立ち上がるときに膝が激しく痛み、手をつかないと動けない。
こうした悩みは、決して年齢のせいだけではありません。膝の関節の中で何が起きているのかを正しく理解し、適切なケアを行うことで、痛みを和らげ、再び趣味や生活を楽しめるようになる可能性は十分にあります。
この記事では、関節の再生医療に携わる専門医の視点から、正座ができなくなる原因と、今日から取り組める改善方法について、丁寧にお話ししていきます。
この記事の内容
なぜ膝が痛むと正座ができなくなるのでしょうか
そもそも、正座という姿勢は人間の関節にとって非常に大きな負荷がかかる動作です。膝を深く曲げるためには、関節を構成する骨、軟骨、靭帯、そして筋肉がすべてスムーズに連動しなければなりません。
膝を曲げる際、健康な関節では「滑り」と「転がり」という複雑な動きが同時に行われています。しかし、何らかの理由でこの動きが妨げられると、痛みや可動域の制限(動かせる範囲が狭くなること)が生じます。
多くの患者さんが「膝の裏にボールが挟まっているみたい」と表現されますが、これは関節の中に炎症が起きて水が溜まっていたり、関節を包む膜が硬くなっていたりすることが原因です。
階段の昇り降りや立ち上がりでも痛みませんか?
正座の悩みを持つ方の多くは、他にも日常生活で不便を感じています。
例えば、駅の階段。降りるときに膝がガクッとくる不安感や、昇るときに膝のお皿の周辺が重苦しく痛むことはないでしょうか。あるいは、椅子から立ち上がる瞬間の、あのズキッとした痛み。
これらはすべて、膝関節のクッション機能が低下しているサインです。最初は「たまに痛む程度」だったものが、放置することで少しずつ「常に痛い」「曲げられない」という状態へと進行していきます。

膝の痛みの正体:変形性膝関節症とは
50代以降で正座ができなくなる最大の原因として挙げられるのが、変形性膝関節症(へんけいせいしざかんせつしょう)です。
これは、膝の骨の表面を覆っている「軟骨(なんこつ)」が、長年の使用や加齢によってすり減ってしまう状態を指します。軟骨は関節のスムーズな動きを助けるクッションの役割を果たしていますが、これが薄くなると骨同士が直接ぶつかりやすくなり、炎症を引き起こします。
想像してみてください。自転車のチェーンに油が切れて、サビついた状態で無理にペダルを漕いでいるようなものです。そのまま無理に曲げようとすれば、当然痛みが出ますし、部品である骨も変形してしまいます。
また、膝の間にある「半月板(はんげつばん)」という板状のクッションが傷ついている場合も、正座のような深い屈曲を妨げる大きな要因となります。
ヒアルロン酸注射で治らないのはなぜ?
整形外科を受診すると、多くの場合「まずはヒアルロン酸の注射をしましょう」と提案されます。あなたも経験があるかもしれませんね。
ヒアルロン酸は関節の潤滑油のような役割を果たすため、一時的に動きが滑らかになったように感じることはあります。しかし、残念ながらヒアルロン酸自体に、すり減った軟骨を元に戻したり、変形の進行を根本から止めたりする力はありません。
いわば、火事が起きている部屋に、外から少し水を撒いているような状態です。一時的に火の勢いは弱まるかもしれませんが、火の元を絶たなければ、時間が経てばまた燃え広がってしまいます。
何度も注射を繰り返しているのに、一向に正座ができるようにならない、あるいは効果が短くなってきたと感じているなら、それは治療法を見直すべきタイミングかもしれません。
自分でできる!膝の痛みを和らげる保存療法
「手術はしたくない」というのは、すべての方に共通する願いです。再生医療という新しい選択肢もありますが、まずは日常生活の中での工夫や運動(保存療法)で、どこまで改善できるかを見ていきましょう。
1. 太ももの筋肉を鍛える「脚上げ運動」
膝を支える最大の筋肉は、太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」です。この筋肉が天然のサポーターとなり、膝にかかる衝撃を吸収してくれます。
仰向けに寝て、片方の膝を立てます。 もう片方の脚をまっすぐ伸ばしたまま、床から10センチほど浮かせます。 5秒間キープして、ゆっくり下ろします。
これを左右10回ずつ、朝晩行うだけでも膝の安定感は変わってきます。
2. 膝の裏を伸ばすストレッチ
正座ができない方は、膝の裏の筋肉や組織が硬くなっていることが多いです。
椅子に浅く腰掛け、片方の脚を前に伸ばします。 かかとを床につけ、つま先を天井に向けます。 背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと上半身を前に倒します。
膝の裏が心地よく伸びているのを感じながら20秒キープしてください。
3. 体重のコントロール
膝には、歩行時に体重の約3倍、階段では約5倍の負荷がかかると言われています。わずか1キロ体重が減るだけで、膝への負担は3キロから5キロも軽くなる計算です。「最近、少し体が重くなったかな」と感じる方は、食事の内容を少し見直すだけで、膝の痛みが劇的に改善することもあります。
4. 正座を補助する道具の活用
どうしても正座をしなければならない場面では、無理をせず「正座椅子」を活用しましょう。お尻の下に小さな椅子を置くことで、膝が完全に曲がりきるのを防ぎ、体重による圧迫を分散できます。これを使うことで、式典やお稽古ごとを乗り切っている患者さんもたくさんいらっしゃいます。

生活習慣のちょっとした工夫
膝の痛みを悪化させないためには、暮らしの環境を整えることも大切です。
和室での生活から洋室での生活へ:布団からベッドへ、床に座る生活から椅子に座る生活へ変えるだけで、膝の屈伸回数が減り、保護につながります。 適切な靴選び:クッション性の高い靴を選び、足元からの衝撃を和らげましょう。 温めるか冷やすか:お風呂上がりなどに膝が重だるく痛む場合は、ゆっくり湯船に浸かって温めるのが効果的です。血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれます。ただし、熱を持って腫れているときは冷やしたほうが良い場合もあります。
よくある質問・誤解への回答
膝の痛みに関して、患者さんからよく受ける質問をまとめました。
痛みがあるときは、安静にして動かさないほうがいいですか?
かつては安静が一番と言われていましたが、現在は「無理のない範囲で動かすこと」が推奨されています。
全く動かさないでいると、関節を支える筋肉が衰え、関節自体もさらに硬くなってしまいます。これを「拘縮(こうしゅく)」と呼びます。激しい痛みがあるときは別ですが、日常生活の中でのウォーキングや、先ほど紹介したストレッチなどは、痛みのない範囲で継続することが回復への近道です。
膝の痛みは「年齢のせい」だから、もう良くならないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
確かに年齢とともに軟骨は変化しますが、痛みの原因は軟骨の減り具合だけでなく、周囲の炎症や筋肉の硬さも大きく関係しています。それらを適切にコントロールすれば、たとえ軟骨がすり減っていても痛みをゼロに近づけ、正座ができるまで回復する方はたくさんおられます。諦める必要は全くありません。
どんな状態になったら病院へ行くべきですか?
目安としては、以下のサインがあれば一度専門医を受診してください。
安静にしていても膝が疼くように痛む。 膝が腫れて、熱を持っている。 痛みのせいで、買い物や外出を控えるようになった。
我慢を重ねると、膝の変形が進んでしまい、治療の選択肢が狭まってしまうことがあります。「まだ大丈夫」と思わず、早めに専門家の意見を聞くことが、将来の自由な歩みを守ることにつながります。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:もう一度、趣味を楽しめる体へ
正座ができない、膝が痛い。それはあなたの体が発している「メンテナンスが必要だよ」という大切なメッセージです。
これまではヒアルロン酸注射だけで様子を見てきた方も、今回お話ししたようなセルフケアや生活習慣の見直しを取り入れることで、変化を実感できるはずです。また、最近では手術や従来の治療法以外にも、体への負担を抑えた再生医療などの新しい選択肢も広がっています。
私は専門医として、多くの患者さんが痛みを克服し、再び旅行に出かけたり、お孫さんと走り回ったりする姿を見てきました。「正座ができないから」と趣味を諦めてしまうのは、あまりにももったいないことです。
膝の痛みと向き合い、適切なケアを始めるのに「遅すぎる」ということはありません。まずは今日、一歩踏み出してみませんか。あなたの膝が軽やかになり、心から毎日を楽しめるようになることを心より応援しています。
膝のことでお悩みがあれば、いつでもお近くの専門医、あるいは当院のような関節の専門クリニックへご相談くださいね。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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