コラム COLUMN
膝 湿布や痛み止めが効かない膝の悩み、根本解決への最短ルートを整形外科専門医が解説

「湿布を貼っても、その場しのぎにしかならない」
「痛み止めを飲んでいる間は少し楽だけど、また痛くなる」
「ヒアルロン酸注射を続けているけれど、だんだん効かなくなってきた気がする」
膝の痛みで来院される方から、このようなお話をよく伺います。膝が痛いと、歩く、階段を上る、立ち上がる、買い物に行くといった日常の動きが少しずつつらくなります。最初は「年齢のせいかな」と思っていても、痛みが長引くと「このまま歩けなくなるのでは」と不安になる方も少なくありません。
湿布や痛み止めは、膝の痛みを和らげるために役立つことがあります。しかし、それだけで膝の悩みが根本的に解決するとは限りません。大切なのは、「なぜ膝が痛いのか」を確認し、その原因に合った対策を行うことです。
この記事では、湿布や痛み止めが効かない膝の悩みについて、考えられる原因と、根本解決に近づくための最短ルートをわかりやすく解説します。
この記事の内容
湿布や痛み止めが効きにくい膝の痛みとは
膝の痛みには、いろいろな出方があります。歩き始めだけ痛い、階段の下りで痛い、正座ができない、立ち上がるときにズキッとする、膝に水がたまる、膝が腫れる、膝が抜けるように感じる。このような症状が続いている場合、単なる一時的な炎症ではなく、膝の中で構造的な問題が起きている可能性があります。
代表的な原因は変形性膝関節症
湿布や痛み止めが効かない膝の痛みで多い原因のひとつが、変形性膝関節症です。変形性膝関節症とは、膝の関節のクッションである軟骨がすり減り、関節に負担がかかりやすくなる病気です。
年齢とともに増えますが、原因は加齢だけではありません。体重の増加、筋力低下、過去のけが、O脚、半月板の傷みなども関係します。膝の中では、クッションが薄くなったり、関節の動きが悪くなったり、炎症が起きたりしています。そのため、湿布や痛み止めで一時的に痛みが和らいでも、根本的な負担が残っていると、また痛みが出てしまうのです。
なぜ湿布や痛み止めだけでは根本解決になりにくいのか
湿布は、皮膚の上から痛みや炎症を和らげる治療です。痛み止めも、体の中で痛みの信号や炎症を抑える治療です。どちらも膝の痛みを軽くするうえで役立つことがあります。
ただし、湿布や痛み止めは「痛みを感じにくくする」治療であり、「膝にかかる負担そのもの」を取り除く治療ではありません。
痛みを抑えても原因が残ることがある
膝の痛みの背景には、太ももの筋力低下、体重による負担、O脚による内側への負担集中、歩き方のくせ、半月板の傷み、軟骨のすり減りなどが隠れていることがあります。
これらの原因が残ったままだと、湿布や痛み止めを使っても、薬が切れたときに痛みが戻りやすくなります。たとえるなら、膝の痛みは「車の警告ランプ」のようなものです。警告ランプだけを消しても、車の不具合は直りません。どこに負担がかかっているのかを調べ、必要な整備をすることが大切です。
膝の痛みを根本から考えるために大切な3つの視点
湿布や痛み止めが効かない膝の悩みでは、まず膝の状態を正しく把握することが大切です。そのために、次の3つの視点が重要になります。
1. 膝のどこが痛いか
膝の内側が痛いのか、外側が痛いのか。お皿の周りが痛いのか、膝の裏が痛いのか。痛む場所によって、考えられる原因は変わります。
たとえば、変形性膝関節症では膝の内側が痛くなる方が多く見られます。一方で、膝の裏の痛みや張りが強い場合は、水がたまっている、筋肉や腱に負担がかかっている、別の病気が関係している可能性もあります。
2. どの動きで痛むか
痛みが出る場面も重要です。階段の下りで痛い、立ち上がりで痛い、長く歩くと痛い、正座やしゃがみ込みができない。これらは、膝のどこに負担がかかっているかを知る手がかりになります。
特に階段の下りで膝が痛む場合は、膝に大きな負担がかかっているサインです。
3. 膝の状態がどこまで進んでいるか
同じ「膝が痛い」という症状でも、膝の中の状態は人によって異なります。レントゲンでは、骨の変形や関節のすき間を確認できます。MRIでは、軟骨、半月板、靭帯、炎症、水のたまり具合などを詳しく見ることができます。
痛みの強さだけでは、膝の状態を正確に判断することはできません。だからこそ、痛みが長引く場合には、画像検査を含めた診察が大切です。

ヒアルロン酸注射を続けても改善しない場合
膝の治療でよく行われるものに、ヒアルロン酸注射があります。ヒアルロン酸は、関節の動きをなめらかにする目的で使われます。一時的に痛みが軽くなる方もいますが、注意したい点があります。
ヒアルロン酸は軟骨を元通りにする治療ではありません
ヒアルロン酸注射は、すり減った軟骨を元に戻す治療ではありません。また、膝の変形、筋力低下、歩き方のくせ、体重による負担を根本的に改善する治療でもありません。
そのため、何年も注射を続けているけれど最近はあまり効かない、注射をしても数日しか楽にならない、毎週のように通っているのに膝の不安が残る、という場合は治療方針を見直すタイミングかもしれません。
ヒアルロン酸注射が全く意味のない治療というわけではありません。しかし、効きにくくなっているにもかかわらず、同じ治療を続けるだけでは、根本解決から遠ざかってしまうことがあります。
根本解決への最短ルートは「診断」と「負担のコントロール」
湿布や痛み止めが効かない膝の痛みを改善するには、痛みだけを追いかけるのではなく、原因を確認することが大切です。
まずは正しい診断を受ける
「年齢のせいですね」「軟骨が減っているから仕方ないですね」「手術しかありません」。このように言われると、不安になってしまいますよね。
しかし、変形性膝関節症でも、初期から進行期まで状態はさまざまです。痛みが強くても、筋力や歩き方を整えることで改善する方もいます。一方で、痛みを我慢し続けた結果、関節の変形が進み、選べる治療が限られてしまうこともあります。まずは、今の膝がどの段階にあるのかを確認することが大切です。
膝にかかる負担を減らすことが大切
膝の痛みを根本から考えるうえで重要なのが、膝にかかる負担のコントロールです。膝に負担がかかり続けると、炎症が繰り返され、痛みが長引きやすくなります。
そのため、筋力をつける、体重を見直す、歩き方を整える、靴を見直す、必要に応じて装具を使う、生活動作を工夫するなど、複数の対策を組み合わせることが大切です。
膝の痛みの根本解決を目指すには、「痛みを止める」だけでなく、「痛みが出にくい膝の使い方」に変えていく必要があります。
自宅でできる膝の痛み対策
膝の痛みがあると、「動かさないほうがいいのでは」と考える方も多いです。たしかに、強い痛みや腫れがある時期に無理をするのはよくありません。
しかし、長期間まったく動かさないでいると、太ももの筋肉が落ち、膝を支える力が弱くなります。その結果、さらに膝に負担がかかりやすくなります。
痛みの少ない範囲で運動する
おすすめは、痛みの少ない範囲で行う軽い運動です。たとえば、椅子に座って膝をゆっくり伸ばす運動、太ももに力を入れる運動、ふくらはぎや太もものストレッチなどです。
いきなり長距離を歩いたり、スクワットを頑張りすぎたりする必要はありません。膝の痛みがある方にとって大切なのは、「たくさん動くこと」ではなく、「膝に合った動かし方を続けること」です。
体重管理で膝への負担を減らす
体重管理も、膝の痛み対策として大切です。膝には、歩く、階段を下りる、立ち上がるといった動作のたびに大きな負担がかかります。
体重が増えると、その分だけ膝への負担も大きくなります。急激なダイエットをする必要はありません。まずは間食を減らす、夜遅い食事を控える、無理のない範囲で歩くなど、小さな工夫から始めることが大切です。
靴や歩き方を見直す
靴選びも見落とせません。すり減った靴、かかとが不安定な靴、底が薄すぎる靴は、膝に負担をかけることがあります。歩きやすく、足元が安定する靴を選びましょう。
また、痛い膝をかばって歩くことで、反対側の膝、股関節、腰に負担が広がることもあります。歩き方が気になる方は、医療機関で相談するとよいでしょう。
クリニックで相談したほうがよいサイン
膝の痛みがあっても、「このくらいで病院に行っていいのかな」と迷う方は多いと思います。ただ、次のような症状がある場合は、早めに整形外科で相談することをおすすめします。
膝の腫れや水が続いている
膝が腫れる、水がたまるという状態は、関節の中で炎症が起きているサインです。一時的に落ち着いても、何度も繰り返す場合は、膝の中に原因が隠れている可能性があります。
痛み止めを使わないと生活できない
痛み止めを飲まないと歩けない、眠れない、外出できないという場合は、痛みを我慢し続ける段階ではありません。
薬でごまかし続けるのではなく、原因を確認することが必要です。
階段や歩行に支障が出ている
階段の下りがつらい、歩く距離が短くなってきた、膝が抜ける感じがある。このような症状がある場合、膝の機能が低下している可能性があります。
早めに状態を確認することで、手術回避につながる選択肢が見つかる場合もあります。
保存療法でできること
膝の治療というと、注射や手術をイメージする方が多いかもしれません。しかし、実際には保存療法がとても大切です。
保存療法とは、手術以外の治療全般を指します。運動療法、ストレッチ、装具、足底板、体重管理、薬の調整、生活指導などが含まれます。
運動療法とストレッチ
太ももの筋肉は、膝を支える大切な役割を持っています。筋力が落ちると、膝が不安定になり、痛みが出やすくなります。
ただし、痛みを我慢して強い運動をする必要はありません。膝に合った運動を、無理なく継続することが大切です。
装具や足底板
O脚が強い方や、膝の内側に負担が集中している方には、装具や足底板が役立つことがあります。足元のバランスを整えることで、膝にかかる負担を分散できる場合があります。
「装具は大げさでは」と感じる方もいますが、膝を守りながら生活するための選択肢のひとつです。
生活習慣の見直し
膝の痛みは、日常生活の小さな積み重ねとも関係します。
床からの立ち上がりを減らす、椅子の生活に変える、重い荷物を長時間持たない、階段の使用を少し減らす、長時間同じ姿勢を避ける。こうした工夫だけでも、膝への負担を減らせることがあります。
保存療法は地味に感じるかもしれません。しかし、膝の痛みを長く安定させるためには、非常に重要な土台です。

よくある質問
Q1. 膝が痛いときは動かさないほうがいいですか?
A
強い痛みや腫れがあるときは、無理に動かす必要はありません。ただし、長く安静にしすぎると筋力が落ち、かえって膝が不安定になることがあります。
痛みが落ち着いている範囲で、軽い運動やストレッチを続けることが大切です。どの運動が合うかは膝の状態によって異なるため、不安な場合は医師や理学療法士に相談しましょう。
Q2. 湿布や痛み止めを続けていれば治りますか?
A
湿布や痛み止めは、痛みを和らげるための治療です。炎症が一時的なものであれば改善することもありますが、変形性膝関節症や半月板損傷などが背景にある場合、それだけで根本的に治るとは限りません。
「薬を使っても繰り返す」「だんだん効かなくなっている」と感じる場合は、原因を調べることが大切です。
Q3. 手術をしないと治らないのでしょうか?
A
必ずしも手術が必要とは限りません。膝の状態によっては、運動療法、体重管理、装具、生活動作の見直しなどで痛みが軽くなることがあります。
ただし、変形が強く、日常生活に大きな支障が出ている場合は、手術が選択肢になることもあります。大切なのは、いきなり「手術か我慢か」で考えるのではなく、今の膝に合った治療を段階的に選ぶことです。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:年齢のせいと諦める前に、膝の原因を確認しましょう
湿布や痛み止めが効かない膝の悩みは、多くの方が抱えています。しかし、「年齢だから仕方ない」と諦める必要はありません。
膝の痛みには原因があります。その原因に合った対策を行うことで、日常生活が楽になる可能性があります。
大切なのは、痛みを一時的に抑えるだけで終わらせないことです。診察や画像検査で膝の状態を確認し、運動、装具、生活習慣、体重管理などを組み合わせて、膝への負担を減らしていきましょう。
膝の痛みが続くと、外出や趣味を控えるようになり、気持ちまで沈んでしまうことがあります。でも、適切な対策を始めるのに遅すぎることはありません。
「まだ大丈夫」と我慢しすぎず、「今の膝をどう守るか」を考えることが、根本解決への第一歩です。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約


