コラム COLUMN
肩 肩が夜に痛くて眠れない|夜間痛の主な原因と診察で伝えること

肩が夜に痛くて眠れない場合、五十肩、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎などが考えられます。夜間痛だけで病名や重症度は決まりません。まずは痛い肩を下にする姿勢を避け、タオルやクッションで腕を支えてみましょう。強い痛みがあるときは無理なストレッチを控えてください。眠れない痛みが続く、腕に力が入らない、急に動かせなくなった場合は、早めに整形外科で原因を確認することが大切です。胸の圧迫感や息苦しさ、冷や汗を伴う場合は、肩の病気と決めつけず救急対応が必要です。
この記事の内容
肩が夜に痛い「夜間痛」とは?昼より痛むのはなぜ?
肩の夜間痛とは、夜間に生じたり、夜間に強く感じられたりする肩の痛みです。炎症に加え、寝る姿勢による圧迫や腕の位置など、複数の要因が関係すると考えられています。
痛い肩を下にして寝ると肩が圧迫されます。また、仰向けでも腕が後ろへ落ち込むと、肩の周囲が引っ張られて痛むことがあります。一方、姿勢を変えてもズキズキ痛む場合があり、寝方だけでは説明できません。
夜間痛の仕組みには未解明な点が残っています。肩の深部の温度との関連を調べた研究もありますが、「夜は血流が悪くなるから痛む」など、一つの理由に決めつけることはできません。[1]
肩の夜間痛を起こす主な原因
代表的な原因は、五十肩、腱板の障害、石灰沈着性腱板炎です。症状が似ているため、年齢や痛む場所だけで病名を判断しないことが大切です。
| 症状・特徴 | 考えられる原因 | 診察で確認すること |
|---|---|---|
| 着替えや髪を整える動作がつらく、肩が次第に硬くなった | 五十肩・凍結肩 | 肩を動かせる範囲と、痛みのため動かせないのか、関節自体が硬いのか |
| 腕を上げると痛い、上げられるが力が入りにくい | 腱板の障害・腱板断裂 | 筋力、けがの有無、超音波やMRIでの腱の状態 |
| 突然、じっとしていても激しく痛み、ほとんど動かせない | 石灰沈着性腱板炎など | レントゲンでの石灰の有無、感染症やけがとの区別 |
| 腕や指まで痛み・しびれが広がる | 首から出る神経の障害など | 首の動きとの関係、感覚や筋力の変化 |
この表は受診時に症状を整理する目安です。複数の病気が重なる場合もあり、自己診断には使えません。
五十肩・凍結肩
五十肩は、肩の周囲に炎症や動きの制限が生じる状態として知られています。関節を包む袋などが硬くなり、動かせる範囲が狭くなった状態は「凍結肩」と呼ばれます。夜の痛みに加え、服の着脱や背中へ手を回す動作が難しくなることがあります。[2]
腱板の障害・腱板断裂
腱板とは、肩を支えて腕を動かす筋肉の腱が集まった部分です。年齢に伴う変化やけがなどで傷み、断裂することがあります。腱板が切れていても、腕を上げられる人は少なくありません。「動くから大丈夫」とは判断できません。[3]
石灰沈着性腱板炎
肩の腱にたまったカルシウムの結晶に関連して炎症が起こる病気です。夜に突然強く痛み始め、眠れなくなることがあります。ただし、急な激痛をこの病気と決めつけることはできません。発熱や腫れなども含めて診察を受けましょう。[4]
肩以外に原因がある場合
首から腕へ向かう神経が刺激されると、肩から腕に痛みやしびれが出ることがあります。手指までしびれる場合は、五十肩だけで説明せず、首や神経も調べます。[5]
今夜からできる対策|肩に負担の少ない寝方
まずは肩を直接圧迫せず、腕の重みを支える姿勢を試しましょう。楽になる姿勢には個人差があり、痛みが増す場合は元に戻してください。
仰向けでは、痛い側の腕をタオルで支える
畳んだバスタオルや薄めのクッションを、痛い側の上腕から肘の下に入れます。肘を軽く曲げ、必要に応じて前腕も支え、肩が後ろへ落ち込まない高さに調整します。肩を無理に持ち上げるほど高くする必要はありません。[6]
横向きでは、痛くない側を下にする
痛くない側を下にし、体の前に置いたクッションや抱き枕に痛い側の腕を預けます。上側の腕が前に垂れ下がらないよう、肘から先も支えるのがポイントです。どの姿勢でも眠れない場合は、寝具だけで解決しようとせず受診してください。
冷やす・温めるは、症状に合わせて選ぶ
急に痛くなり熱っぽさがある場合は、保冷剤をタオルで包み、短時間冷やして楽になるか確認します。冷やして痛みが増す場合は中止してください。強い腫れや発熱があるときは、冷やすだけで様子を見ないことが大切です。
強い痛みが落ち着き、こわばりが中心になった時期には、入浴などで温めると動かしやすくなる場合があります。冷却や温熱は症状を和らげる補助です。保冷剤やカイロを当てたまま眠らず、皮膚の感覚が鈍い方は特に注意しましょう。[2]
強い痛みを我慢するストレッチは控える
夜間痛が強い時期に、腕を反対の手で強く引っ張ったり、痛みを我慢して頭上へ上げたりすると、症状が悪化する場合があります。重い物を持つ作業や頭上での作業も減らしましょう。
ただし、長期間まったく動かさないと肩が硬くなることがあります。けがや激痛がある場合は先に診察を受け、それ以外では痛みの少ない範囲で日常動作を続けながら、運動の内容を医師や理学療法士と調整します。
整形外科を受診する目安|待たない方がよい症状
眠れないほどの肩の痛みは、長く我慢せず相談してよい症状です。緊急性は、痛みの強さだけでなく、けが・発熱・胸の症状などを合わせて判断します。
| 受診の目安 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 119番などの救急対応 | 肩や腕の痛みに、胸の圧迫感、息苦しさ、冷や汗、強い吐き気などを伴う。胸の痛みが目立たない場合もあります。 |
| 当日中に相談 | 突然の耐えがたい痛み、発熱を伴う肩の赤み・腫れ、転倒後に腕が上がらない、変形がある、急に著しく力が入らなくなった。 |
| 近日中に整形外科へ | 痛みで何度も目が覚める、寝方を変えても眠れない、着替えなどに支障がある、筋力低下やしびれが続く、治療しても悪化している。 |
肩や腕の痛みが心臓の病気で起こる場合もあります。胸の症状や冷や汗などを伴うときは、左右のどちらの肩かにかかわらず、救急対応を優先してください。[7]
軽い痛みが一時的に出ただけで、日ごとに改善している場合は、負担を減らしながら経過を見られることもあります。ただし、夜間痛に加えて原因不明の体重減少や発熱がある場合、がんの治療歴がある場合は、早めに医師へ伝えてください。夜間痛だけで重大な病気を意味するわけではありません。
診察で伝えること|スマートフォンに残せる受診メモ
「肩が痛い」だけでなく、痛みが始まった経緯、眠れない程度、困っている動作を伝えると、診断や治療方針を考える手がかりになります。記録のために受診を遅らせる必要はありません。
- いつから・どちらの肩:突然か徐々にか。転倒、重い物を持つ作業、スポーツなどのきっかけ。
- 夜の困り方:寝つけないのか、寝返りで目が覚めるのか。おおよその覚醒回数。
- 痛みと姿勢の関係:横向きだけか、仰向けでも痛いか。起き上がると楽になるか。
- 昼間の動きと力:洗髪、着替え、棚への出し入れなどで何ができなくなったか。
- 肩以外の症状:首の痛み、手のしびれ、発熱、胸の違和感など。
- 薬・注射・持病:使用した薬の名前と効果、注射を受けた時期、糖尿病・腎臓病などの持病。お薬手帳も持参。
左右両方が痛む場合や、朝のこわばりが強い場合も伝えましょう。診察前に家族に腕を強く動かしてもらうなど、痛みを再現する確認は不要です。
整形外科では何を調べる?レントゲン・エコー・MRIの役割
肩の診断は、問診・診察と必要な画像検査を組み合わせて行います。すべての人に最初からMRIが必要なわけではありません。
診察では、自分で動かせる範囲に加え、医師が腕を支えて動かしたときの硬さや筋力を確認します。しびれがあれば、首や神経の状態も調べます。
| 検査 | 主に確認すること |
|---|---|
| レントゲン | 骨折、関節の変形、石灰沈着など。腱板そのものの断裂は十分には分かりません。 |
| 超音波(エコー) | 腱板の状態や周囲の炎症の手がかり。動かしながら観察できる場合もあります。 |
| MRI | 腱板断裂の範囲や筋肉の状態など。診断がはっきりしない場合や、手術を含めた治療判断に必要な場合に検討します。 |
レントゲンで異常がなくても、肩の病気がないとは限りません。一方、腱板断裂があっても痛みのない人がいることが報告されています。画像で異常が見つかった場合も、痛む動作や筋力、診察所見と合うかを確認します。[8]
肩の夜間痛の治療|手術以外の方法と手術を考える場面
治療は原因に合わせて選びます。薬や運動療法などで改善を目指せる場合があり、夜に痛いという理由だけで手術が決まるわけではありません。
痛みを抑えながら、肩の動きを保つ
痛みが強い時期は、負担のかかる動作を減らし、必要に応じて内服薬や外用薬を使います。痛みの変化に合わせて、肩の動く範囲を保つ運動や、肩を支える筋肉の訓練を進めます。
消炎鎮痛薬は、胃腸や腎臓などへの影響に注意が必要です。市販薬を含めて使用中の薬を伝え、自己判断で複数の痛み止めを重ねないでください。
注射は目的と対象を確認して選ぶ
炎症が強い場合、関節や肩の周囲の袋にステロイドなどを注射し、短期的に痛みを抑えることを検討します。病態によってはヒアルロン酸注射が選択される場合もありますが、どの夜間痛にも同じ注射を行うわけではありません。
注射で痛みが軽くなっても、切れた腱がつながったことを意味しません。ステロイド注射には血糖上昇や、まれな感染などのリスクがあり、繰り返す必要性や手術予定との関係も含めて判断します。効果が乏しい場合は、注射を続ける前に診断や治療方針を見直します。
手術を検討するタイミング
腱板断裂では、保存療法を行っても痛みや筋力低下が続き、睡眠・仕事・日常生活への支障が大きい場合に手術を検討します。断裂の状態、年齢、活動量、利き腕、本人が取り戻したい動作も判断材料です。
転倒などの後に急に腕が上がらなくなった場合は、早い段階で手術の適応を評価する必要があります。また、断裂や筋肉の変化が進むと修復が難しくなることがあるため、長く先延ばしにしてよいかは医師と相談してください。
手術後には一定期間の保護やリハビリが必要です。手術の利点だけでなく、回復にかかる負担や合併症も踏まえて選択します。
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ|肩が夜に痛いときは睡眠への影響も伝えましょう
肩の夜間痛は、原因の確認と、その時期に合った対処が大切です。
- 五十肩、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎などが主な原因です。
- 腕を支える寝方を試し、強い痛みを我慢するストレッチは控えましょう。
- 眠れない痛みや筋力低下が続く場合は受診し、胸の症状や発熱などがあれば緊急性を確認します。
- 画像所見だけでなく、症状、生活への支障、これまでの治療を踏まえて方針を決めます。
「痛みで何回目が覚めるか」「どの動作ができなくなったか」も、治療を考える大切な情報です。症状が続く場合は、整形外科で原因を確認しましょう。
よくある質問
肩が夜に痛いときに迷いやすい、通院時の伝え方や日常生活の疑問にお答えします。
Q1.昼は痛くないのに、夜だけ肩が痛くても受診してよいですか?
はい。昼に痛みが軽くても、夜の痛みで睡眠が妨げられるなら受診して構いません。診察時に痛くなくても、痛む姿勢や目が覚める回数を伝えてください。
Q2.夜間痛がなくなれば、腱板断裂も治ったということですか?
いいえ。痛みが軽くなっても、断裂が残っている場合があります。症状の改善は良い変化ですが、筋力や肩の動きも確認し、通院や運動を続ける必要性を医師と相談しましょう。
Q3.肩が夜に痛い場合、枕やマットレスを買い替えるべきですか?
すぐに買い替える必要はありません。まずは手元のタオルやクッションで腕を支え、痛みの変化を確認しましょう。寝具を変えても肩の病気自体が治るとは限らず、眠れない状態が続くなら受診が優先です。
Q4.受診前に痛み止めを使うと、診断しにくくなりますか?
通常は、痛みを我慢して受診する必要はありません。処方薬は指示どおりに使い、薬の名前、使用時刻、どの程度効いたかを伝えてください。市販薬の選択に迷う場合は、持病や併用薬を薬剤師に相談しましょう。
参考文献・参考情報
病気の説明と国内研究を参照しています。研究で関連が示されても、原因や全員への効果が確定するわけではありません。
- 肩腱板断裂患者における肩夜間痛と肩深部体温の関連.肩関節.2019;43(2):509–514.
- 日本整形外科学会.五十肩(肩関節周囲炎).
- 日本整形外科学会.肩腱板断裂.
- 日本整形外科学会.石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎).
- 日本整形外科学会.頚椎症性神経根症.
- 新武雄病院.ちょこっとリハ:夜間時のポジショニング.
- 国立循環器病研究センター.急性心筋梗塞.
- 無症候性腱板断裂の疫学.肩関節.2008;32(2):365–367.
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
各種ご相談やご予約はこちら
- ひざの痛みに関する相談
- セカンドオピニオンの相談
- 再生医療に関する相談
- MRI検査のご予約


