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肩 肩が痛くて背中に手が回らない|着替えで困る動きと原因を解説

肩が痛くて背中に手が回らない|着替えで困る動きと原因を解説

肩が痛くて背中に手が回らない場合、五十肩による関節の硬さや、肩を支える腱の傷み・炎症などが考えられます。エプロンのひもを結ぶ、下着を着脱するといった動作には、肩だけでなく肩甲骨や肘の動きも必要です。「後ろに回らない」という症状だけで、五十肩と決めつけることはできません。まずは痛みを我慢して腕を引っ張らず、着替え方や服を工夫しましょう。夜も眠れない、着替えに支障がある、転倒後から力が入らない場合は、早めに整形外科で原因を確認することが大切です。

背中に手を回す「結帯動作」とは

結帯動作(けったいどうさ)とは、帯を結ぶときのように、腰の後ろから背中へ手を回す動きです。腕を上げる動きとは異なるため、頭上には手が届いても、背中には回しにくい場合があります。

背中に手を回すには、腕を後ろへ引く動き、肩を内側へひねる動き、肘を曲げる動きが必要です。肩甲骨や体幹の動きも関わります。[5]

そのため、手が届く高さだけを見て「肩のひねりが悪い」「肩甲骨が硬い」と原因を一つに絞ることはできません。エプロンを結ぶ高さと、下着のホックを留める高さでは、必要な動きも異なります。

肩が痛くて背中に手が回らない主な原因

代表的な原因は五十肩ですが、腱板の障害や石灰沈着性腱板炎などでも同じように困ることがあります。発症のきっかけ、動きの硬さ、力の入り方を合わせて判断します。

症状・特徴考えられる原因
徐々に痛くなり、後ろへ回す以外の動きも硬くなった五十肩・凍結肩
腕を動かすと痛む、力が入りにくい、けがの後から悪化した腱板の炎症・断裂など
急に強く痛み、ほとんど動かせない石灰沈着性腱板炎など
長く続く痛みと硬さがあり、関節の変形がみられる変形性肩関節症など
首から腕に痛みが広がり、手指のしびれもある首の神経の障害など

表は診断の目安であり、症状が重なることもあります。

五十肩・凍結肩

五十肩では肩に痛みが生じ、着替えや整髪が難しくなります。関節を包む袋などが硬くなり、動く範囲が狭くなった状態は、凍結肩と呼ばれます。[1]

痛みが強い時期と、痛みが落ち着いても硬さが残る時期では、適した運動の強さが異なります。「痛みが減ったから、背中にもすぐ手が回る」とは限りません。

腱板の障害

腱板とは、肩を支え、腕の動きを助ける腱の集まりです。腱板が傷んだり切れたりすると、肩を動かしたときの痛みや、力の入りにくさが生じます。

腱板断裂があっても腕を上げられる方はいます。反対に、痛みのために力を出せない場合もあるため、「上がるから断裂ではない」「力が入らないから断裂だ」とは判断できません。[2]

急な痛みやしびれを伴う場合

石灰沈着性腱板炎は、腱板にたまったカルシウムの結晶に関連して炎症が起こる病気です。夜間などに突然強く痛み、動かせなくなる場合があります。[3]

一方、首から腕へ広がる痛みや手指のしびれがある場合は、首の神経が関係していることもあります。肩のストレッチだけで対処せず、症状の範囲を医師に伝えてください。[4]

自分で確認したいポイント

確認しておきたいのは、「どこまで届くか」だけでなく、「いつから、どの動きで、どのように困るか」です。無理に動かす検査はせず、普段の生活で気づいたことを記録しましょう。

  • 転倒や重い物を持ったことがきっかけか、徐々に始まったか
  • 腰の後ろには届くか、下着のホックの高さで困るか
  • 腕を前に上げる動作や、髪を洗う動作でも痛むか
  • 痛くて止まるのか、突っ張るのか、力が入りにくいのか
  • 寝返りで目が覚めるか、腕や指のしびれがあるか

左右の動きにはもともと差があるため、左右差だけでは病気とはいえません。以前はできていた動作が難しくなったかどうかが、受診時の大切な情報になります。

家族に腕を強く引き上げてもらったり、痛みを再現する動作を何度も繰り返したりする必要はありません。

エプロン・下着・上着を着替えるときの工夫

痛みがある間は、背中へ無理に手を伸ばさず、前や横で操作できる服・方法を選びましょう。着替えの負担を減らすことは、治療中の生活を保つうえでも役立ちます。

困る動作負担を減らす工夫
エプロンのひもを背中で結ぶ前や横で結べるタイプ、ひもを結ばないタイプに替える
下着の後ろのホックを留める前開き・前留めなど、痛い肩を大きく動かさずに着脱できるものを選ぶ
上着の袖に腕を通すゆったりした前開きの服を選び、着るときは痛い側から、脱ぐときは痛くない側から行う
背中を洗う柄の長いスポンジを使い、届かない場所を無理にこすらない
後ろポケットから物を取るよく使う物を前ポケットや体の前に置いたバッグへ移す

上記の方法でも痛む場合は、途中で止めてください。肩の手術後などに動きの制限を指示されている方は、主治医の指示を優先します。

自宅でできる対策と避けたいストレッチ

自宅での対策は、痛みの強い動作を減らしつつ、無理のない範囲で動きを保つことが基本です。強い痛みを我慢して伸ばす必要はありません。

痛いときに背中でタオルを引き上げない

背中でタオルを持ち、反対の手で強く引き上げるストレッチは、肩の状態によっては痛みを悪化させます。「届く高さを毎日更新する」ことを目標にしないでください。

特に、じっとしていても痛い時期、夜間痛が強い時期、けがの直後は、自己流の強いストレッチを控えましょう。

痛みが落ち着いている場合の軽い運動

けがの直後ではなく、安静時の強い痛みがない場合は、次のような小さな動きから始める方法があります。

  1. 椅子に座り、机の上にタオルを置きます。
  2. 痛い側の手と前腕を、楽な位置でタオルにのせます。
  3. 肩をすくめず、痛みの出ない範囲でタオルを少し前へ滑らせ、戻します。

これは背中へ手を回す動きを直接治す運動ではなく、無理なく肩を動かす一例です。鋭い痛みが出る場合は中止してください。運動後や翌朝に痛みが増える場合も、運動量を減らして相談しましょう。

肩の硬さや腱板の状態によって必要な運動は異なるため、受診後に医師や理学療法士から個別に教わるのが適切です。

温める・冷やす場合の注意

こわばりが中心で温めると楽な場合は、入浴などで軽く温めてもよいでしょう。動かした後に熱っぽさがあり、冷やすと楽な場合は、布越しに短時間冷やす方法もあります。

温熱や冷却は症状を和らげる補助であり、原因そのものを治すとは限りません。低温やけどや冷やしすぎに注意し、痛みが増す方法はやめてください。

整形外科を受診した方がよい症状

着替えや睡眠に支障がある場合は、何週間も我慢せず整形外科へ相談してください。急なけがや全身症状を伴う場合は、より早い対応が必要です。

早めに受診したい場合

  • エプロンや下着の着脱が難しく、生活に支障がある
  • 夜に痛みで目が覚める
  • 動かせる範囲が徐々に狭くなっている
  • 休んでも改善せず、痛みを繰り返す
  • 腕や指のしびれ、力の入りにくさがある

当日中の受診などを考えたい場合

  • 転倒や衝突の直後から、腕を上げられない・明らかに力が入らない
  • 急激に強く痛み、ほとんど動かせない
  • 肩が赤く腫れ、熱を持ち、発熱もある

肩や腕の痛みに胸の圧迫感、息苦しさ、冷や汗を伴う場合は、肩以外の病気の可能性もあります。119番など、救急対応を検討してください。

整形外科ではどのような検査をする?

診察では、痛みの場所に加え、自分で動かしたときと、医師が支えて動かしたときの違いを確認します。画像検査は、疑われる原因に合わせて選びます。

「痛み」「硬さ」「筋力」を分けて評価する

自分でも医師が支えても動きが制限される場合は、関節の硬さが手がかりになります。支えると動くのに自力では難しい場合は、痛みや筋力低下、腱板・神経の問題などを考えます。

ただし、強い痛みだけでも動きは制限されます。五十肩と腱板の障害が重なる場合もあるため、一つの動作だけで診断は決めません。

背中に手を回す動きに加え、腕を上げる動きや、肘を体の横につけて前腕を外へ開く動きなども確認します。

レントゲン・超音波・MRIの役割

検査主に確認すること
レントゲン骨折、関節の変形、石灰の沈着など
超音波(エコー)腱板や腱の状態、滑液包の変化など
MRI腱板の断裂や筋肉・関節内の状態など

レントゲンで大きな異常がなくても、腱や関節を包む袋に問題がある場合があります。一方で、すべての方に最初からMRIが必要なわけではありません。

また、画像に変化があっても、現在の痛みの原因と一致するかは別に考える必要があります。症状、診察、画像を合わせて判断します。

治療は運動療法・薬・注射などから検討する

多くの場合は、生活動作の調整や運動療法、薬などの保存療法から検討します。治療の目的は、痛みを和らげ、必要な生活動作を取り戻すことです。[1][2]

運動療法・リハビリテーション

痛みが強い時期は、痛みを増やさない範囲で負担を調整します。痛みが落ち着いてきたら、肩や肩甲骨の動き、筋力などを評価しながら運動を進めます。

「背中の高い位置まで届く」ことだけでなく、「エプロンを自分で着けられる」など、本人が困っている動作を治療目標にすることが大切です。

薬・注射治療

痛みには、飲み薬や外用薬を使う場合があります。年齢、腎機能、胃腸の病気、併用薬などに合わせて選びます。

炎症による痛みが強い場合には、関節内や滑液包へのステロイド注射などを検討します。注射する場所や薬剤は病態によって異なり、すべての方に同じ注射が適するわけではありません。[2][3]

ステロイド注射には、一時的な痛みの増加、血糖上昇、まれな感染などのリスクがあります。特に糖尿病がある方は事前に伝えてください。注射で痛みが軽くなっても、硬さや動作の問題には運動療法が必要な場合があります。

手術を考えるのはどのような場合?

背中に手が回らないだけで、すぐに手術が必要になるわけではありません。診断に合った保存療法を続けても、痛みや生活上の支障が大きい場合などに検討します。[1][2]

五十肩で強い硬さが続く場合には、関節鏡で硬くなった組織をゆるめる手術などが選択肢になります。腱板断裂では、断裂の状態や筋力、仕事内容、活動量、本人の希望を踏まえて判断します。

特に、転倒などの後から急に力が入らなくなった場合は、自己判断で長期間様子を見ずに受診してください。手術の必要性だけでなく、適切な治療時期を確認することが重要です。

よくある質問

肩は上がるのに、背中にだけ手が回らないのはなぜですか?

腕を上げる動きと背中に回す動きでは、必要な肩の動きが異なるためです。背中に回すには、肩を後ろへ引く・内側へひねる・肘を曲げる動きが必要です。肩が上がるだけで、五十肩や腱板の障害を否定することはできません。

痛くないのに背中に手が回らない場合も、病院へ行くべきですか?

以前より動かなくなった、徐々に硬くなる、着替えに困る場合は受診をおすすめします。痛みが落ち着いても関節の硬さが残る場合があります。昔からの左右差があるだけで、変化や生活への支障がなければ、急いで受診する必要性は高くありません。

寝るときは、痛い肩をどうすればよいですか?

痛い肩を下にする姿勢を避け、楽な位置で腕を支えてみてください。仰向けでは肘から前腕の下に薄いクッションを置き、横向きでは抱き枕などを使う方法があります。姿勢を変えても眠れない痛みが続く場合は受診しましょう。

背中に手が回るようになるまで、どれくらいかかりますか?

原因や関節の硬さによって異なります。五十肩では回復に数か月から年単位を要する場合があり、痛みが軽くなっても動かしにくさが残ることがあります。「いつまでに治る」と一律にはいえないため、生活動作の変化を確認しながら治療を調整します。

再生医療という新しい選択肢

近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。

例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。

ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ

肩が痛くて背中に手が回らない場合は、原因を確かめ、痛みの程度に合った対策を選ぶことが大切です。

  • 五十肩だけでなく、腱板の障害や石灰沈着性腱板炎なども考えられます。
  • 背中に手を回す動作には、肩・肩甲骨・肘など複数の動きが関わります。
  • 痛みを我慢して引っ張らず、前開きの服などで着替えの負担を減らしましょう。
  • 治療は運動療法や薬・注射などを検討し、必要に応じて手術を考えます。
  • 着替えや睡眠に支障がある、けがの後から力が入らない場合は、早めの受診が必要です。

症状が続く場合は整形外科で原因を確認しましょう。

参考文献・参考情報

  1. 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」
    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html
  2. 日本整形外科学会「肩腱板断裂」
    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
  3. 日本整形外科学会「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」
    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/calcific_tendinitis.html
  4. 日本整形外科学会「頚椎症性神経根症」
    https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_radiculopathy.html
  5. 鈴木加奈子、西中直也「結帯動作における肘関節屈曲角度と肩関節・骨盤角度との関係-左右での検討-」日本肘関節学会雑誌. 2023;30(2):1–5.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jelbow/30/2/30_1/_article/-char/ja

札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。

院長 川上公誠

(プロフィール)


監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長

岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。

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