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肩 夜も眠れない肩の痛みはどう治す?四十肩・五十肩の原因と最短で痛みを引かせる5つの秘訣を専門医が解説

夜、布団に入ってようやく一息。そう思った瞬間にズキズキと肩が痛み出し、何度も寝返りを打つうちに朝を迎えてしまう。そんな辛い経験をされていませんか。
「肩が痛くて好きなゴルフを諦めた」 「着替えのときに腕が上がらなくて、毎日がストレス」 「病院に行っても、加齢のせいだと言われそうで怖い」
当院にも、このような切実なお悩みを持って来院される方がいらっしゃいます。特に50代から80代の方にとって、肩の痛みは生活の質を大きく下げてしまう深刻な問題です。
でも、安心してください。その痛みには必ず理由があり、適切な対処法が存在します。年齢のせいだと諦める必要はありません。
この記事では、整形外科専門医の視点から、夜も眠れないほどの肩の痛みを最短で和らげるための具体的な方法を詳しくお伝えします。この記事を読み終える頃には、今夜から試せる「痛みを引かせるヒント」が見つかっているはずです。
この記事の内容
なぜ夜になると肩が痛むのか?その正体を知る
まず、なぜ日中よりも夜に痛みが強く感じられるのでしょうか。実はこれには、医学的な理由がいくつかあります。
一つは、寝ている姿勢そのものが肩に負担をかけているからです。立っているときは腕の重みが下に逃げますが、横になると腕の重さが直接肩の関節にかかったり、肩が内側に巻き込まれたりして、炎症が起きている部分を圧迫してしまうのです。
もう一つは、血流の変化です。夜、体がリラックスして体温が下がってくると、血の巡りが変わり、痛みを感じさせる物質が肩の関節の中に留まりやすくなります。
こうした夜の痛みを私たちは「夜間痛(やかんつう)」と呼びます。夜間痛があるということは、肩の中で強い炎症が起きているサインでもあります。
四十肩・五十肩と他の病気は何が違う?
多くの方が「五十肩かな?」と思われますが、肩の痛みには大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは、いわゆる「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」です。これは肩の関節を包んでいる袋(関節包)が硬くなって、動きが悪くなる状態です。よく「関節が錆びついてしまった」と例えられます。
もう一つは、「腱板断裂(けんばんだんれつ)」といって、肩を動かすための筋肉の筋(スジ)が傷ついたり、切れたりしている状態です。こちらは、いわば「ロープがほつれてしまった」ような状態です。
どちらも似たような痛みが出ますが、対処法が少し異なります。自分がどちらのタイプなのかを知ることが、改善への第一歩となります。

最短で痛みを引かせる5つの秘訣
それでは、夜も眠れないほどの痛みを解消し、最短で日常生活を取り戻すための5つの秘訣をお伝えします。
1. 寝る姿勢を工夫して「肩の逃げ道」を作る
夜の痛み対策で最も即効性があるのが、寝る姿勢の工夫です。仰向けで寝る場合は、痛い方の肩から肘の下に、折りたたんだバスタオルや薄いクッションを敷いてみてください。
こうすることで、腕の重みで肩が後ろに引っ張られるのを防ぎ、関節への負担を減らすことができます。イメージとしては、肩を少し前に浮かせてあげるような感覚です。
横向きで寝るのが楽な場合は、痛い方の肩を上にし、抱き枕や大きなクッションを抱えるようにすると、腕がぶら下がらずに安定します。
2. 痛みの時期に合わせて「温める」か「冷やす」かを見極める
「痛いときは温めた方がいいの? 冷やした方がいいの?」という質問をよくいただきます。
目安として、ズキズキと脈打つような激しい痛みがあり、熱を持っているときは「冷やす」のが正解です。これは炎症を抑えるためです。
一方で、重だるい痛みや、動かしたときにピキッとくるような痛みの場合は「温める」のが効果的です。お風呂でゆっくり肩まで浸かったり、蒸しタオルを当てたりして血流を良くすると、組織の修復が早まります。夜寝る前に肩を温めることで、夜間痛が和らぐ方も多いですよ。
3. 「振り子運動」で関節の錆びつきを防ぐ
肩が痛いと、どうしても動かさないように固定してしまいがちですが、ずっと動かさないでいると、関節はどんどん硬くなってしまいます。
そこでおすすめなのが「振り子運動(コッドマン体操)」です。 やり方はとても簡単です。
丈夫な机などに痛くない方の手を突き、お辞儀をするように少し前かがみになります。痛い方の腕の力を完全に抜き、ダラリと垂らします。そのまま、体をごくわずかに揺らすことで、腕を前後左右に「ゆらゆら」と揺らします。
腕の筋肉を使うのではなく、重力に任せて肩の隙間を広げるようなイメージです。これなら、強い痛みを感じることなく、関節の柔軟性を保つことができます。
4. 日常生活での「ちょっとした動作」を見直す
最短で治すためには、新たな傷を作らないことが大切です。特に、以下のような動作には注意が必要です。
・高いところのものを取る ・後ろにあるものを取ろうと腕を回す ・重い買い物袋を急に持ち上げる
これらの動作は、弱っている肩の組織に追い打ちをかけてしまいます。高いところのものは踏み台を使う、後ろを向くときは体ごと回転するなど、肩をひねる動作を避けるだけでも、回復のスピードはぐんと上がります。
5. 専門医による「ピンポイントの処置」を怖がらない
「注射は癖になるから打ちたくない」とおっしゃる方がいますが、これは大きな誤解です。
夜も眠れないほどの激しい炎症が起きている場合、飲み薬や貼り薬だけでは限界があることもあります。そのようなとき、関節の中の炎症を抑えるお薬や、潤滑油となるヒアルロン酸をピンポイントで注入することは、非常に有効な手段です。
痛みを我慢し続けると、脳が痛みに敏感になり、さらに治りにくくなる「痛みの悪循環」に陥ってしまいます。適切なタイミングで専門医の処置を受けることは、決して遠回りではなく、むしろ最短で治すための賢い選択と言えるでしょう。

放置は厳禁!病院へ行くべきチェックリスト
「これくらいで病院に行ってもいいのかしら?」と迷われる方も多いでしょう。以下の項目に一つでも当てはまる場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。
・夜、痛みで目が覚めてしまう日が数日続いている ・腕を上げようとすると、肩だけでなく首や背中まで痛む ・反対の手で支えても、腕が水平より上に上がらない ・着替えや髪を洗う動作が、痛みで困難になっている ・一週間安静にしても、痛みが全く変わらない、あるいは強くなっている
これらは、自己流のケアだけでは改善が難しいサインかもしれません。早期に適切な診断を受けることで、手術を回避し、保存療法(手術をしない治療)で治せる可能性が高まります。
よくある質問・誤解への回答
Q. 痛みがあるときは、無理にでも動かしてリハビリしたほうがいいですか?
A. 答えは「時期によります」。 強い炎症がある時期(急性期)に無理に動かすと、かえって炎症を悪化させ、回復を遅らせてしまいます。まずは安静と痛みのコントロールが優先です。痛みが落ち着いてきたら、徐々に動かしていくのが正しいステップです。「痛気持ちいい」範囲を超えて、脂汗が出るような無理な運動は控えましょう。
Q. 四十肩・五十肩は放っておけば自然に治ると聞きましたが、本当ですか?
A. 確かに、1〜2年かけて痛みが引いていくケースはありますが、必ずしも「元の通り」に戻るわけではありません。適切な治療をせずに放置すると、痛みが引いた後に関節が固まってしまい、腕が十分に上がらなくなる「拘縮(こうしゅく)」という後遺症が残ることがあります。将来、孫を抱っこしたり、趣味を楽しんだりするためにも、放置せずにケアすることをお勧めします。
Q. 湿布を貼っていれば、そのうち治りますか?
A. 湿布は炎症を抑え、一時的に痛みを和らげるのには役立ちますが、痛みの根本原因(関節の硬さやスジの傷み)を治す力はありません。湿布はあくまで補助的なものと考え、前述した姿勢の工夫や運動、そして必要に応じた専門的な治療を組み合わせることが大切です。

再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ:あなたの肩には、まだ良くなる力が眠っています
「もう歳だから、肩が上がらなくても仕方ない」 そんなふうに自分に言い聞かせているなら、それはとてももったいないことです。
私たちの体には、傷ついた場所を治そうとする素晴らしい力が備わっています。私たち医師の仕事は、その力が最大限に発揮されるよう、邪魔をしている痛みや炎症を取り除き、正しい方向に導いてあげることです。
夜も眠れないほどの痛みは、あなたの体が発している「助けて」というサインです。そのサインを見逃さず、今日お伝えした5つの秘訣を、できることから一つずつ試してみてください。
そして、もし自分一人では不安だと感じたら、いつでも専門医の門を叩いてくださいね。あなたの日常から肩の痛みが消え、ぐっすりと眠れる夜が戻ってくることを、心から願っています。
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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