「肩を回すとゴリゴリ音が鳴る…」「最近、肩に違和感や痛みも出てきた」
そんな経験はありませんか？
肩の「ゴリゴリ音（軋轢音）」は、年齢に関係なく多くの人が感じる現象ですが、ときにその裏には身体の異常が潜んでいることもあります。今回は、肩が鳴る原因や痛みがある場合の考えられる病気、そして適切な対処法について、再生医療を専門とする整形外科医の視点から解説します。

肩のゴリゴリ音の正体とは？

肩を回すと「ゴリゴリ」「バキバキ」といった音が鳴る現象は、医学的には「軋轢音（あつれきおん）」と呼ばれます。以下のような要因が考えられます。

1. 関節の構造的な摩擦音

肩関節は骨・軟骨・腱・滑液包などが複雑に組み合わさった構造をしています。この中で、骨と骨が接触したり、腱がこすれたりすることで音が鳴ることがあります。

2. 気泡の破裂

関節内には少量の気泡が存在しますが、肩を動かした拍子にそれが弾けて音がすることがあります。これは無害な現象で、痛みがなければ特に心配いりません。

3. 筋肉の緊張や硬さ

肩周辺の筋肉が凝り固まっていたり、バランスが崩れていると、関節の動きがスムーズでなくなり、音が鳴りやすくなることもあります。

痛みを伴う場合に考えられる原因

「音が鳴るだけでなく、痛みもある」という場合は、何らかの疾患や障害が隠れている可能性があります。

インピンジメント症候群

肩関節周囲の腱や滑液包が骨に挟まれて炎症を起こす病気です。腕を上げたときに痛みを感じるのが特徴で、肩を動かすたびにゴリゴリと音が鳴ることがあります。

腱板損傷・腱板断裂

肩を動かす筋肉（腱板）が加齢や使いすぎで損傷・断裂することで、音や痛みが生じます。重度の場合、腕が上がらなくなることもあります。

関節唇損傷

肩の関節を支える軟骨の一部である関節唇が損傷すると、関節が不安定になり音や痛みを伴うことがあります。スポーツや転倒によるケガが原因になることが多いです。

変形性肩関節症

加齢や過度な使用により、軟骨がすり減り、関節に変形が起こることで、音や痛みが現れる状態です。進行すると肩の動きが制限されることもあります。

自宅でできる対処法と予防法

痛みのない「ゴリゴリ音」には多くの場合、治療は必要ありません。しかし、違和感が続いたり、痛みを伴う場合は注意が必要です。以下は自宅でできる対処法です。

1. 肩回りのストレッチや体操

肩甲骨や背中の筋肉を柔らかく保つことで、関節の動きをスムーズにし、音の軽減が期待できます。

2. 湿布や温熱療法

肩の筋肉を温めることで血流が良くなり、炎症や緊張が和らぐことがあります。慢性的な肩こりにも有効です。

3. 姿勢の見直し

猫背や前かがみの姿勢が続くと、肩に負担がかかりやすくなります。デスクワークが多い方は、正しい姿勢を意識しましょう。

医療機関での治療が必要なケース

以下のような場合には、早めの整形外科受診をおすすめします。

• 肩の音とともに強い痛みや夜間痛がある
• 腕が上がらない、回らない
• 痛みが数週間続く、または悪化している
• 肩が外れるような感覚がある

こうした症状は、放置すると関節の状態がさらに悪化し、日常生活に支障をきたすおそれがあります。MRIやエコーなどの画像検査によって、原因を正確に診断することが大切です。

再生医療という新たな選択肢

従来の治療では改善が難しい慢性的な肩の痛みに対して、近年ではPRP療法（多血小板血漿注射）や幹細胞治療といった再生医療も注目されています。

• PRP療法：自己血液から成分を抽出し、傷んだ腱や靭帯に注射して回復を促進
• 幹細胞治療：脂肪や骨髄から取り出した幹細胞を肩関節に注入し、修復や再生を目指す

これらは手術を回避したい人や、長年の痛みに悩む方にとって有効な選択肢となり得ます。

まとめ

肩のゴリゴリ音は誰にでも起こりうる現象ですが、痛みを伴う場合は早めの対処が重要です。セルフケアで改善しないときは、医療機関に相談しましょう。
また、再生医療のような新しい治療法も視野に入れることで、これまで改善しなかった痛みへの希望が広がるかもしれません。