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肩 五十肩と腱板断裂の違いは?症状の特徴と診断に必要な検査を解説

五十肩と腱板断裂の違いは、主に「肩の動きが硬くなる病態」か、「肩を支える腱が切れている病態」かという点です。五十肩では炎症や関節を包む袋の硬さが、腱板断裂では加齢による腱の傷みやけがが関係します。ただし、肩の痛みや夜間痛は共通し、症状だけでは区別できません。まずは痛みを強める動作を控え、症状が続く場合は整形外科で原因を確認しましょう。特に、転倒後から腕が上がらない、急に力が入らなくなった場合は、早めの受診が必要です。
この記事の内容
五十肩と腱板断裂は、どこが違う?
五十肩では肩の硬さ、腱板断裂では腕を動かすときの力の入りにくさが、見分ける手がかりになります。 ただし、どちらにも例外があり、一つの症状で診断することはできません。
| 比較する点 | 五十肩 | 腱板断裂 |
|---|---|---|
| 主な病態 | 肩周囲の炎症や関節包の硬さ | 肩を動かし、支える腱の断裂 |
| 起こり方 | はっきりしたきっかけなく始まることが多い | 加齢に伴って徐々に生じる場合と、けがをきっかけに生じる場合がある |
| 自分で腕を動かすとき | 痛みや硬さで動かしにくい | 痛みや筋力低下で動かしにくいが、上がる人もいる |
| 医師が支えて動かすとき | 硬さが進むと、支えても動く範囲が狭い | 硬さを伴わなければ、比較的動かせる |
| 夜間痛 | 起こる | 起こる |
| 主な診断方法 | 問診・診察と、ほかの病気を確認するための画像検査 | 問診・診察に超音波やMRIを組み合わせる |
日本整形外科学会も、腱板断裂では五十肩に比べて肩が硬くなることが少なく、断裂があっても腕を上げられる患者さんが多いと説明しています。「腕が上がるから腱板は切れていない」とは判断できません。[日本整形外科学会「肩腱板断裂」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html)
五十肩とは
五十肩は、中年以降にみられる肩の痛みや動かしにくさを表す呼び名です。医療では「肩関節周囲炎」と説明されることがあります。
ただし、「五十肩」という言葉が指す範囲は広く、年齢と肩の痛みだけで決められる病名ではありません。本記事では、腱板断裂などの明らかな原因を区別したうえで、肩周囲の炎症や関節を包む袋である「関節包」の硬さが問題となる状態を中心に説明します。
硬さが強くなった状態は「凍結肩」と呼ばれます。[井樋栄二「腱板断裂の治療とリハビリテーション」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/8/56_56.650/_article/-char/ja/)
腱板断裂とは
腱板とは、肩の深いところにある筋肉の腱が集まり、腕の骨を支えている部分です。腕を上げたり、内側・外側に回したりする働きを助けます。
腱板断裂は、この腱が切れた状態です。一部分の厚みが傷む「部分断裂」と、腱の厚みを貫いて切れる「全層断裂」があります。
中高年では、腱の傷みが進んで、明らかなけががなくても断裂することがあります。転倒や重い物を持ち上げた動作がきっかけになる場合もあります。[日本整形外科学会「肩腱板断裂」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html)
症状だけで見分けにくい理由
夜に痛む、着替えにくい、腕が上がらないという症状は、どちらでも起こります。 診察では、痛みの強さだけでなく「なぜ動かせないのか」を確認します。
「痛くて動かせない」と「硬くて動かない」は違う
肩を動かせない理由には、主に次の三つがあります。
- 痛みを避けようとして、十分に動かせない
- 関節が硬くなり、動く範囲そのものが狭くなっている
- 腱や筋肉の働きが低下し、腕を支える力が出にくい
五十肩でも、強い痛みがあれば力を出せません。また、初期には硬さが目立たないことがあります。
一方、腱板断裂でも肩の硬さを伴う場合があります。「支えれば上がるかどうか」は診察の手がかりですが、それだけで確定するものではありません。 腱板断裂患者の肩の硬さに着目した国内研究も報告されています。[「腱板断裂患者における後方関節包タイトネスに着目した保存療法の経過」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/28/1/28_29/_article/-char/ja/)
MRIで断裂が見つかっても、痛みの原因とは限らない
腱板が切れていても、痛みなく生活している人がいます。画像で断裂が見つかった場合でも、その断裂が現在の症状にどの程度関係しているかを確認する必要があります。
たとえば、断裂が以前から存在し、新たに生じた炎症や肩の硬さが痛みの中心になっている可能性もあります。
整形外科では、画像所見と、痛みが始まった時期・動作・筋力・肩の硬さを照らし合わせて判断します。[「無症候性腱板断裂の臨床像」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu/32/2/32_2_409/_article/-char/ja/)
自分で確認しておきたいポイント
自宅では病名を決めるより、症状の経過と困っている動作を整理すると診察に役立ちます。 痛みを我慢して腕を上げたり、家族に強く動かしてもらったりする必要はありません。
受診前に、次の点をメモしておきましょう。
- 始まり方: 転倒や荷物を持った直後か、徐々に始まったか
- 困る動作: 髪を洗う、服を着る、背中に手を回す、棚に物を置くなど
- 力の変化: 以前持てた物が持ちにくい、腕を上げた姿勢を保ちにくいか
- 睡眠への影響: 夜に目が覚めるか、どの姿勢で痛むか
- ほかの症状: 首の痛み、手のしびれ、発熱などがあるか
- これまでの治療: 薬、注射、リハビリで何が変わったか
「痛い場所」を指で示すことも役立ちます。ただし、肩の病気で二の腕が痛むこともあるため、場所だけで原因は判断できません。
整形外科を受診した方がよい症状
睡眠や日常生活に支障がある場合は、五十肩だと思って長く様子を見ず、受診しましょう。 けがの後に急に動かせなくなった場合は、早めの評価が必要です。
早めに受診したい症状
- 肩の痛みで夜に何度も目が覚める
- 着替えや洗髪など、普段の動作が難しい
- 腕に力が入りにくい状態が続く
- 痛みや動かしにくさが徐々に悪化している
- 治療を続けても改善に乏しい、または症状が変わった
当日中の受診を考えたい症状
- 転倒・打撲の直後から腕が上がらない、肩が変形している
- 急に強い痛みが出て、ほとんど動かせない
- 発熱とともに肩が赤く腫れている
肩の痛みに胸の圧迫感、息苦しさ、冷や汗が伴う場合は、肩以外の病気も考えるため、救急要請を検討してください。
五十肩・腱板断裂以外の病気もある
突然の激しい肩の痛みでは、腱に石灰がたまって炎症を起こす「石灰沈着性腱板炎」も考えます。レントゲンが診断に役立つ病気です。[日本整形外科学会「石灰沈着性腱板炎」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/calcific_tendinitis.html)
また、肩関節の変形や、首の神経の圧迫などでも肩周辺が痛むことがあります。手のしびれや首の動きとの関係も、診察で伝えましょう。
診断に必要な検査は?レントゲン・超音波・MRIの役割
診察で原因を絞り、検査で確かめるのが基本です。 すべての肩の痛みに、最初からMRIが必要なわけではありません。
診察:動く範囲と筋力を分けて確認する
医師は、自分で腕を動かす場合と、腕を支えて動かす場合の違いを調べます。腕を上げる動作だけでなく、肘を体の横につけて腕を外側に回す動きなども確認します。
肩甲骨や体を大きく動かして、肩関節の動きにくさを補っていることもあります。そのため、見かけ上どこまで上がるかだけでなく、肩関節自体の動きを評価します。
画像検査:それぞれ得意なことが違う
| 検査 | 主に確認すること | 知っておきたい点 |
|---|---|---|
| レントゲン | 骨折、脱臼、関節の変形、石灰の沈着など | 腱板そのものは評価しにくく、異常がなくても断裂は否定できない |
| 超音波検査(エコー) | 腱板の状態、断裂、滑液包の状態など | 動かしながら観察できる。評価は検査者の技術や病変の部位にも左右される |
| MRI | 断裂の広がり、腱の引き込み、筋肉のやせ方など | 治療方針や手術の検討に役立つが、画像だけで痛みの原因は決められない |
レントゲンが正常でも、診察で腱板断裂が疑われる場合や、症状が続く場合には、超音波やMRIを追加することがあります。[井樋栄二「腱板断裂の治療とリハビリテーション」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/8/56_56.650/_article/-char/ja/)
自宅ではどう対処する?無理なストレッチは避けましょう
原因が分からない段階では、痛みを強める動作を減らし、強く伸ばさないことが基本です。 一方で、医師の指示なく長期間まったく動かさないことも避けましょう。
家事や寝る姿勢を調整する
- 重い物は体から離して持たず、両手で体に近づけて持つ
- 高い棚への出し入れなど、腕を上げ続ける作業を減らす
- 痛い肩を下にして寝るのを避ける
- 仰向けでは肘から前腕の下にタオルやクッションを入れ、楽な位置を探す
楽な姿勢には個人差があります。支えを入れてかえって痛む場合は、位置や高さを変えてください。
運動は痛みと病態に合わせる
五十肩では、痛みが強い時期と、硬さが中心となる時期で運動の進め方が異なります。強い痛みを我慢して伸ばすと、症状が悪化する場合があります。
けがの後から力が入らない場合は、自己判断で筋力トレーニングを始めず、先に診察を受けましょう。診断後は、医師や理学療法士に教わった運動を、無理のない範囲で続けることが大切です。[日本整形外科学会「五十肩」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html)
治療方法は?手術以外で改善する場合もあります
五十肩も腱板断裂も、薬や運動療法などの保存療法が選択肢になります。 ただし、腱板断裂では「症状が改善すること」と「切れた腱がつながること」を分けて考える必要があります。
五十肩:痛みを抑えながら動きを取り戻す
五十肩では、痛みの程度に応じて生活動作の調整、痛み止め、注射、リハビリを組み合わせます。
炎症による痛みが強い場合は、ステロイド注射を検討することがあります。痛みが落ち着いたら、肩の状態に合わせて動く範囲を広げていきます。保存療法を続けても強い硬さが残る場合は、追加の処置や手術を検討することもあります。[日本整形外科学会「五十肩」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html)
腱板断裂:残っている機能を生かす
腱板断裂では、負担のかかる動作を調整し、残っている腱板や肩甲骨周囲の筋肉の働きを改善する運動療法を行います。必要に応じて薬や注射を組み合わせます。
断裂が残っていても、痛みや日常動作が改善する場合があります。ただし、痛みが減ったから断裂そのものが治ったとは限りません。経過中に力が落ちた、腕が上がりにくくなった場合は、再評価が必要です。[日本整形外科学会「肩腱板断裂」](https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html)
薬や注射は、安全面も踏まえて選ぶ
痛み止めは、胃腸や腎臓への影響、ほかの薬との飲み合わせを確認して使用します。
ステロイド注射は痛みを和らげるために用いることがありますが、断裂した腱を修復する治療ではありません。注射後の痛み、まれな感染、一時的な血糖上昇などにも配慮します。糖尿病がある方や手術を検討している方は、事前に医師へ伝えてください。
腱板断裂で手術を考えるタイミング
手術は、断裂の大きさだけでなく、症状・筋力・生活上の必要性・保存療法の経過から判断します。 年齢だけで一律に決めるものではありません。
主に、次のような場合に検討します。
- 転倒などの後から、急に腕が上がらなくなった
- 筋力低下が強く、仕事や日常生活に支障がある
- 保存療法を続けても、痛みや動作の不自由さが十分に改善しない
- 断裂の広がりや筋肉の状態から、修復する時期を検討する必要がある
特に、けがの直後から明らかな筋力低下がある場合は、長く自己判断で様子を見ないことが大切です。
一方、痛みが少なく、必要な生活動作ができている場合は、経過を確認しながら保存療法を続ける選択もあります。
腱板修復術の後には、腱の保護と段階的なリハビリが必要です。再断裂や肩の硬さなどのリスクも含め、利き腕、仕事内容、家事・介護の役割、通院の負担まで相談して治療方針を決めます。[井樋栄二「腱板断裂の治療とリハビリテーション」](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/8/56_56.650/_article/-char/ja/)
再生医療という新しい選択肢
近年では、従来の治療に加えて再生医療という新しい選択肢も登場しています。特に、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)治療といった方法は、体の自然治癒力を引き出して関節の修復を促す治療法として注目されています。
例えば、脂肪から採取した幹細胞を関節に注入する治療では、変性した軟骨の修復や再生が期待できます。これにより、「もう正座はできないかも…」とあきらめていた方が、再び正座ができるようになったケースもあります。
ただし、再生医療はすべての症例に効果があるわけではないため、適応の有無をしっかり診断してもらうことが重要です。

まとめ|五十肩と腱板断裂の違いは、診察と検査で確認する
五十肩と腱板断裂は症状が似ていますが、必要な治療や経過の見方が異なります。 次の点を押さえておきましょう。
- 五十肩では肩の硬さ、腱板断裂では力の入りにくさが手がかりになる
- 夜間痛や腕の上がりにくさだけでは区別できない
- レントゲンが正常でも、腱板断裂が隠れている場合がある
- 腱板断裂があっても、保存療法で症状が改善する場合がある
- けがの後に急に腕が上がらなくなった場合は、早めに受診する
「年齢的に五十肩だろう」と決めつけず、症状が続く場合は整形外科で原因を確認しましょう。
よくある質問
五十肩と診断されましたが、MRIをお願いした方がよいですか?
全員にMRIが必要なわけではありません。ただし、けがの後から力が入らない、治療しても改善しない、診察で腱板断裂が疑われる場合には、追加検査を相談しましょう。超音波検査が役立つ場合もあります。
五十肩が進むと腱板断裂になるのですか?
五十肩が進行すると必ず腱板断裂になる、という関係ではありません。病態は異なりますが、同じ肩に断裂と関節の硬さが重なることはあります。途中から力が入りにくくなった場合は再評価が必要です。
肩で音がするのは、腱板が切れているからですか?
音だけでは腱板断裂とは判断できません。痛みのない音が出ることもあります。音とともに痛みや力の入りにくさ、動作の不自由さがある場合は、整形外科で相談してください。
湿布で痛みが軽くなれば、腱板断裂ではないですか?
湿布が効くかどうかでは区別できません。腱板断裂でも周囲の炎症が落ち着くと痛みが軽くなる場合があります。痛みが減っても筋力低下や動かしにくさが残る場合は、診察を受けましょう。
参考文献
- 日本整形外科学会.五十肩(肩関節周囲炎)
- 日本整形外科学会.肩腱板断裂
- 日本整形外科学会.石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)
- 井樋栄二.腱板断裂の治療とリハビリテーション.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine.2019;56:650–655.
- 無症候性腱板断裂の臨床像.肩関節.2008;32:409–412.
札幌ひざのセルクリニックでは、患者様の症状に合わせた適切な診断と治療計画のご提案をしております。ひざだけでなく、肩、股関節等の関節、また長引く腰痛などの慢性疼痛の治療も行っております。西18丁目駅徒歩2分、札幌医大目の前にありますので、お気軽に御相談下さい。
院長 川上公誠
(プロフィール)
監修 川上 公誠(整形外科専門医)
札幌ひざのセルクリニック院長
岐阜大学医学部卒業。母が人工関節手術で痛みから解放された経験をきっかけに整形外科医を志し、これまでに人工関節置換術を含む手術を5,000件以上手がけてきました。手術が難しい高齢者や合併症のある方にも寄り添える治療を模索する中で再生医療と出会い、その効果に確信を得て、2024年に「札幌ひざのセルクリニック」を開院。注射のみで改善が期待できるこの先進的な治療を、北海道中に届けたいという想いで、関節に特化した再生医療を提供しています。
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